NOVEL

□我輩はヒイロ・ユイであるB *
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俺の名前はヒイロ・ユイ。
大型犬になって早や三ヶ月、生活にも少し慣れてきた。

「どう、ヒイロ?少しはマシになった?」


犬の姿というのは、なかなかハードだという事が分かった。
真夏の暑さは、人間の頃と比べようがない程暑い。
いや、「暑い」を通り越して最早「痛い」。

異変に気付いたカトルの計らいによって、こうして時折デュオの目を盗んでは、カトルの執務室に涼みに来ている。

「ん〜やっぱり元々人間だから、急に犬の身体になっても対応出来ないのかな〜?」

俺の体温を計りながら、カトルはカルテに何やら書き込んだ。

「犬になるなら半年が限度だよね。だって、もし飼い主が真冬の外に出しちゃったら、間違いなく凍死しちゃうよ」

「イヌニナール」は例え犬の姿になったとしても、犬の身体能力全て兼ね備えている訳ではないようだ。

聴覚や脚力の発達くらいで、思考などは人間の時のままなのだから、当然感覚も人間と同じ。
つまり、今の俺は真夏に毛皮のコートを着込んでいるのと同じという事だ。

「カトル、ヒイロ見かけ…あ!いた!ヒイロ、お前んな所にいたのかよ〜」

ノックもせずに執務室へ入って来たデュオが、俺を見つけて寄って来た。
どうやら庭にいない俺を探していたようだ。

庭……
確かに本物の犬ならば、あの広大な庭は絶好の遊び場だろう。
俺にとっては、果てしなく続く砂漠と何ら代わりないがな。

「なに、お前もしかして夏バテ?」

グイと顎を持ち上げられ、コバルトブルーが覗き込んできた。
心なしか、デュオも少しバテ気味だ。
首筋から汗が流れ、髪も張り付いている。

とても直視出来なくて、俺はバツが悪そうに目を逸らした。

「図星か?あはは!お前『ヒイロ』って名前の割りに弱いんだな」

両手で頭をグシャグシャに撫でられ、息がかかりそうなくらい顔を近付けられる。
心拍数が跳ね上がったのが分かった。

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