NOVEL
□ハロウィンパーティー
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「…教会に居た頃さ〜、お化けの恰好してさ。その辺の家に行ってお菓子ねだったりした事あんだよな」
「……」
「楽しかったな〜って思って…」
ヒイロにも教えたかったんだ、と言いながら、デュオは彼に軽く口づけた。
デュオと違い、物心がついた頃から特殊な訓練を受けていたヒイロは、ハロウィンの思い出などない。
いや、ハロウィンそのものすら知らないかもしれない。
だからデュオは、たった二人きりでもハロウィンを楽しもうと、朝早くから準備をしていたのだ。
「ま、オレ達みたいな大人がまさかお菓子ねだりに行けねーからな。せめて家ン中で…って思ってさ」
「…そうか」
ハロウィンを教えてくれたシスターや神父は、今はいない。
楽しい思い出が詰まった教会も、焼けてなくなってしまった。
あれから目まぐるしく環境が変化し、漸く手に入れた平和の中でヒイロと迎える初めてのハロウィン。
いつの間にかハロウィンでお菓子をねだる事が出来ないくらい、大人になってしまったけれど。
「『お菓子くれねーと悪戯しちゃうぞ』って言うんだぜ?」
身体ごとヒイロに向き合ったデュオが、悪戯っぽい笑みを浮かべながら囁く。
「甘い物は苦手だ」
「そうだっけ!じゃあ、アレどうすっかな〜」
テーブルの上に撒き散らしてある原色のそれを、少し淋しそうに見つめたデュオを抱きしめ直したヒイロは――
「あの甘そうなお菓子は苦手だが…これなら悪くない」
そう言いながら、柔らかく微笑んでデュオに深く口づけるのだった。
その後、カボチャをくり抜く事に失敗したデュオは、勿体ないからとパンプキンパイを焼いたのだが…。
「…うッ!」
砂糖の分量を誤ったらしく、恐ろしく甘いパンプキンパイが出来上がった。
それを一口食べたヒイロの眉がみるみる内に皺寄ってゆくのを見たデュオは、腹を抱えて大笑いするのだった。
END
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