NOVEL
□我輩はヒイロ・ユイであるC
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「散歩…って、あれ?お前、風邪ひいたのか?」
明らかに様子がおかしい俺に、デュオが駆け寄って来る。
前々から思っていたが、デュオは過保護気味だ。
それだけ俺が…いや、「犬のヒイロ」が愛されている証拠なのだろうが、逆にそれが面白くない。
「ブシャン!」
「変なくしゃみしてんな〜……今日は散歩は中止かな」
ボリボリと頭をかいたデュオは一瞬だけ思案したような顔をした後、俺を抱え上げた。
「…ワン!」
「うわっ、暴れんなって」
突然の事に狼狽した俺に一喝すると、デュオは俺の部屋へ向かって歩き始める。
両手が塞がっている為、不躾にも足でドアを小突いて部屋の中へ入ったデュオは、カウチの上に静かに俺を降ろした。
「今日は、お前はココ」
顔を上げた俺に向かい極上の笑みを返してくれたデュオは、すぐさま隣に腰掛けた。
そして、俺の体を優しく撫で始める。
「まずは休養、な?」
額から後頭部、そして体全体をゆっくりと撫でてくれる。
風邪で疲れた俺にとっては、これ以上ない癒しだ。
「お前と同じ名前のヒイロはさ〜…」
いつの間にかウトウトとしていた俺の耳が、思いがけない言葉に反応してピクリと跳ね上がる。
「無愛想で無鉄砲で…人の言う事なんか聞きゃしねーんだ。いっつも心配ばっかかける奴で…」
言葉とは反対に嬉しそうな笑みを浮かべながらのそれに、俺はどう受け取って良いか解らない。
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