NOVEL
□AC207
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久しぶりの来客に喜んだは良いが、まさかそこにヒイロが立っていたとは。
営業スマイルを中途半端に張り付かせたまま、デュオがドアを閉めそうになってしまうのは仕方ない。
「えっと……」
しかも視線を落として見てみれば、既にヒイロの片足がこちらへ入っているではないか。
これでは閉めるに閉められないと、デュオは観念して彼を招き入れるのだった。
「コーヒーでいいよな?」
「…お構いなく」
ヒイロから思い掛けない普通の返答が返ってきて、デュオは背中越しに聞いてまた驚いた。
年月は随分とヒイロを人間らしく、そして一般的な青年として成長させたらしい。
――ついでに「アレ」も、若気の過ちとして終わっていてほしいんだけど。
でないと、自分は何の為に長い間悩んだのか分からない。
目の前のソファーに腰掛けたヒイロをちらりと見ながら、デュオは密かに考えた。
だが、そんな些細な願いも、次の瞬間にはヒイロによって粉々に砕かれてしまう。
「返事をもらいに来た」
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