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□紙上のお誘い
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こんなこと、
あたしの身に起きるはずが
な い
紙上のお誘い
今日は暑いな。でもこれが気温の所為じゃないことぐらい分かってる。
だけどそれに気付かないフリをしてるあたしは強情なんだろうか。
学年初めてのテスト。あたしの手には、芳しくない点数の現国の答案用紙。
もう少し勉強するべきだったと、頭の隅で後悔しつつ、あたしは動揺を隠しきれないでいた。
こんな焦ってるところ見せちゃだめだ。
だって、現に先生は何だか楽しそうにしてる。
それでも泳いでしまう目と緩む口元をどうにかしたくて、あたしは答案用紙の陰に隠れた。
目から下を隠したまま、最後の一人にテストを返してる先生を盗み見た。
「おい銀八、採点ミス多いぞ」
そう言ってトシは答案用紙をひらひらさせながら教壇に向かっていった。
「あー?どーせ得してんだからいいでしょ」
「いや、10点も低いんですけど!!」
先生はぼーっと答えたけど、トシはふざけるな、とでも言いたげに答案用紙を教卓に叩きつけた。
ミスという言葉に反応して、あたしはコレもミスなんじゃないかと訝った。
答えが欲しくてもう一度先生を盗み見る。
つもりだった。なのに目が合ってしまうとは。
先生は少しニッと笑うと、トシの答案の採点ミスを直し始めた。
あたしは顔が赤くなってるのが自分でも分かった。
トシの後ろには、クラスのほとんどの人が並んでた。
少しは自惚れてもいいのかな?でもやっぱり怖いから、半分は疑っておこう。
『今度先生とデートしない?』
end
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