♪
□雨のち晴れ
1ページ/2ページ
「おねーさん、お茶しない?」
なんだこいつ。ナンパかよ。何この道着。だっさ。
「あ、これ?これさー制服なんだよね。かっこ悪いっしょ?神龍寺ってとこなんだけどさーおねーさん知ってる?」
見てるのばれた。つーか知らねーよ。あたしの出身神奈川じゃねーし。つーか付いてくんな。青臭いガキが社会人にナンパなんかすんじゃねーよ。
「ねーおねーさん今日仕事だったの?土曜なのに大変だね〜」
うっせーよ。あんたは土曜だってのになんで制服なんだよ。あたしは休日出勤させられてイライラしてんだよ。早く帰りたいの。さっさとどっか行け。
「俺はさー部活だったんだよね〜ま、ダルくて途中で抜けてきたんだけど」
なんだってこいつはあたしの心を読むんだ。つーかこんな髪型のくせに部活なんかやってんだ。意外。つーか最後までやれよ。
「何やってると思う?」
野球ではないな。つーか運動部はありえないだろ。軽音部とか?
「正解はーアメフトでした。おねーさんアメフト観たりする?」
うっわー運動部だよ。アメフト?マイナーじゃん。興味ないし。つーかこいつ会話する気あんの?
「はー…おねーさん頑固だね」
あんたもね。そこまでしてあたしと寝たいか。誰がこんなガキと。
「おねーさんが今何考えてるか当ててあげよっか?『うざい邪魔早く消えろ』?」
大正解だよ。分かったらさっさと消えてくれ。このままだと家の方角ばれちゃう。
「ちっ」
は?今こいつ舌打ちした?むっかー年下の癖によー!舌打ちしたいのはこっちだよ!まじうぜー。あーあ消えてくんねーかなまじで。
「あんたさぁ、そんなんだから男できねえんじゃねーの?せっかく俺が声掛けてやってんだからちったぁ可愛いげ見せろよ」
うっわー本音出たよ。何こいつ。二重人格?こんな奴にあたしの恋愛のことで口だしされたくねー。
「ちっ、どけやブス」
いったぁ!ぶつかってくんなよ!ブスと思ってんならナンパなんかしてくるな!!あー腹立つー!しかも去っていきそうだし。
「ちょっとあんた!ぶつかったお詫びにお茶ぐらい奢りなさいよ!」
「…それより、あんたの部屋で茶でも飲もうぜ」
にやりと笑ったあいつの顔に少し心臓が跳ねながら、部屋を掃除したばっかりで良かったと心底思った。
たまにはこんな経験も悪くない。
OLは潤いが欲しいのだ。
雨のち晴れ
いつの日にか虹を渡ろう