08/25の日記

21:06
SS:崇拝と慈悲
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※【T&B】クロスオーバー【BLEACH】
※14話を見て勢いで書いたもの







依存してるんでしょうね、と兎が幸せそうに笑った。それがあまりに綺麗に笑うものだから恐怖さえ感じて。いやそんなまさか。男が呆然と呟いた。そんなことない、と二重の意味を込めて言えば、兎は不思議そうに男を見つめてふと視線を空へと向けた。


「暗闇しか知らなかった僕に光をくれた。あの人が僕の世界を変えたんです」

「・・・それは、恋じゃないッスよ」


 緑色の衣を風に揺らして、男が苦い顔をして言った。遠くを見つめる兎の目。信頼も、好意も通り越したその先にあるものは。たぶん。

男の言葉に、盲目の兎がさっぱりとした顔で笑った。ええ、そうでしょうね。でも貴方だって僕と同じじゃないですか。




「これは、愛ですよ」




それは崇拝という名の狂気


(兎と下駄帽子)






「未来ある若者を縛り付けたくないんだよ」

 わかるだろ、と困ったような笑みを浮かべて虎が少年の橙色の髪を優しく撫でた。ごまかすつもりだ、この人は。少年はじわりと目頭が熱くなるのを堪えきれない。

 手放すのか、と問いかけたら冒頭の台詞。そんなの理由にならないと駄々をこねる自分はこの人にとって所詮子供でしかないのだと少年は悔しそうに俯いた。意見なんて聞いてもらえない。

「わからねぇよ、そんなの」
「だぁ!困ったな・・・ほら泣くなって」

 あのな、勘違いしてる若者を逃がしてやるのは大人の役目なんだよ。
 囁くような虎のその言葉に少年は目を見開いた。溢れ続ける雫を拭うことなく少年は虎に掴み掛かる。

「なんでなんだよ。・・・なんで、アンタ等はそうやって!!」


 本当に嫌だったら逃げられる。もちろんそれは目の前の男も同じなはずだ。なのにズルズルと関係を続けているの理由なんて一つしかない。逃がして欲しいんじゃない。そんなことを望んでなどいない。
 
 欲しいものはいつだって一人だ。



「大人ってズリィ・・・」

隠してしまうんだ。本当に言ってほしい言葉は。騙してしまえるんだ。自分の気持ちさえも。アイツも、この人も。みんな。
少年の呟きに、虎が大人の顔をして微笑む。あいつもお前さんぐらい素直だったらなぁ、なんて。

「わかってねぇな。大人のズルさは精一杯の優しさなんだって」
「・・・ふざけんな」


 そんな優しさなんて欲しくない。少なくとも俺は。
 少年が拗ねたように言うと、虎が楽しそうに笑った。


それはとても残酷な慈悲


(虎と少年)








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