novel

□僕らの軌跡〜Summer's memory〜
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「ふぅ…」

 太陽がさんさんと照りつける八月。
 動いていなくても汗をかいてしまうくらい暑いこの時期に、クーラーの無い所で勉強しようとするのは無謀というもの。
 扇風機のひ弱な風では、この暑さに対抗するにはまだまだ足りない。
 受験戦争真っ只中、高校3年生の紫栄沙耶(シエイサヤ)にとって、冷房のゆき届いた図書館は貴重な勉強場所の一つだ。
 家からは少し離れているが、自分の部屋にクーラーのついていない沙耶は、夏場涼しく快適な図書館にやって来た。

 自習スペースの机の下にカバンを置くと、課題の付箋を張っていたページを開く。
 大きな欠伸を一つして、余分に持ってきた下敷きで顔を扇ぎながら問題にむかった。
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