novel
□僕らの軌跡〜One year ago〜
1ページ/8ページ
照りつける太陽の下。
「あっ…」
「どーしたよ?」
「……定期忘れた」
ガサゴソとカバンの中をあさるが、見当たらない。
「学校に置いてきた…」
「…あっちゃぁ〜。どぉすんの?」
「…取りに行ってくる。木村は先帰ってくれればいいよ」
「確かにこの炎天下で家まで歩いて帰ったら…死ぬな」
「はぁ…早めに気づいたのがせめてもの救いだな。じゃぁ、また明日な」
クラスメートの木村勇太(キムラユウタ)に手を振りながらきびすを返す。
「おう!生きて帰れよ〜」
後ろに友の声を聞きながら、来た道を戻る。
降り注ぐ光は、当に皮膚を通り抜けて体の芯まで灼こうとするかの様に、ヒリヒリとしみる。
今にも体が溶け出してしまいそうだ。
熱せられた生温い風が、剥き出しの腕を撫でていった。