novel
□僕らの軌跡〜Summer's memory〜
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黙々と課題を消費していく。
沙耶の通う高校にほど近いこの図書館には、同じ学校の制服を着た学生達をよく見かける。
沙耶自身、図書館に来ると必ず一人は知り合いと会う。
ちょうど今回のように。
「………栄さん?」
急に名前を呼ばれ、沙耶はビクッと体を揺らした。
慌てて振り向くと、一人の青年が立っていた。
背が高く少し面長で、短髪がよく似合っている。
「…あ、愁くん。勉強?」
「おう。家だと誘惑がいっぱいだからな」
そう言いながら、村上愁吾(ムラカミシュウゴ)は沙耶の横の席に座った。
肘まで捲った真っ白なカッターシャツから、部活で程良く焼けて引き締まった腕がのぞいている。
「誘惑?昼寝とか昼寝とか…昼寝?」
沙耶はからかい半分、おどけた口調で応える。
「そーなんだよなぁ、昼寝とか昼寝とか昼寝…じゃないっつーの」
どんだけ寝ればいいんだよ、と愁吾は苦笑する。
愁吾と沙耶は二年の時に同じクラスになった。
お互いに明るく人見知りのしない性格だったため、話し始めるとすぐに意気投合した。
しかし、三年に上がる際、クラス替えでクラスが別れてしまったため、こうやって話すのは久しぶりだ。