novel

□僕らの軌跡〜One year ago〜
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「……っと、あったあった」

 机の中をのぞき込むと、目当ての物があっさり見つかった。

「ふぅ………」

 そのまま椅子にドカッと腰を下ろし、何気なく教室を見渡す。
 幾つかの机の上にはまだ鞄や制服が置いてあった。

 愁吾の所属するソフトテニス部は他の運動部に比べて比較的早く終わる。
 そのため愁吾が帰る支度をして学校を出る時にも、学校の至る所から生徒達の部活に励む声が聞こえてくるのだ。

 現在の時刻は、三時を少しまわったところ。
 今日は、明日の試合に備えて通常の半分の時間で部活を終えている。

 ここにいても何もする事は無いが、太陽が照りつける中、たった今戻って来た道をまた歩かねばならないと思うと、暗鬱としてくる。
 冷房はついていなかったが、窓が全開になっていて外にいた時とは違うさっぱりとした夏風が教室に吹き込んでいたため、心持ち涼しい気がした。

 そのまま暫くぼーっと時計の針を見つめていると、ふいに教室の扉が音を立てた。
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