いとおしいと…

□誕生日
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一葉


花さそふ

嵐の庭の

雪ならで

ふりゆくものは

我が身なりけり


入道前太政大臣



桜が 散ってゆく

寂しい目に映える 青葉

里にも 初夏の風が吹く

自分に、誕生日が あることすら
忘れていた

「もうすぐ、誕生日だろ?」

そういって外食の約束をした。本当に
帰って くるのか?
土壇場でキャンセルなんて
よくある 事だが…

忙しい奴。

それでも
いつでも
待っている オレがいる


でも、ちょっと待て。

オレの誕生日は




……八月だ。



二葉


花の色は

移りにけりな

いたづらに

わが身世にふる

ながめせし間に


小野小町



ドアを叩く音
もう、深夜だ。
「誰だよ…ったく…」

玄関に向かうと 誰もいない…
風の悪戯か…
今日は風が少し強い


会いに来てくれたかと…
期待してしまった。


誕生日…

祝って喜ぶ歳でもないが…

「祝ってやる」
なんて言われたら
嬉しいもんだ。

閉めようとしたドアが
動かない

「…よっ」
目の前に現れた人影
見慣れた 笑顔

「お帰り…」

笑顔で 迎えたい


不覚にも 泣きそうになった…


手には酒瓶と 買い物袋…

「何とか、間に合ったよな」
ニカッと
音が聞こえる様な笑顔

「……ああ…」

「入っていいか?」
「…あぁ…」

体をずらし、招き入れる。


ドアが
静かに閉まった。
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