BOOK2

□02.答えなんて言わなくても
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※学パロです。一応高校生設定



学校帰り、いつもの帰り道を彼と一緒に歩いていると、ふいにひらひらと視界に入ってきたぼたん雪。世間は温暖化問題で騒がしいというのに今年も変わらず降るこの白を見ていると、世界はまだまだ大丈夫なんじゃないかと思う。

( まあそんなのただの戯言だけど、 )

ふと、黙々と隣を歩く彼の横顔を見た。そういえば、雪の白さを肌の白さに例えて言うっけ。けれど彼の肌の白さは雪の白さとは程遠い気がする。確かに白い肌なんだけれど、それは寒さの所為で少々赤みが差していて、雪や白磁のような無機質さとは違った確かな"生"を思わせる。マフラーから少し覗いている頬が、吐息が作り出した白い靄に規則的に撫でられる、その一連の様子を眺めながら、さりげなく歩幅を合わせて歩いてくれているんだなぁなんて唐突に気付いた。

昔から彼…ユーリはこうだ。幼馴染みだからどうのこうのと言って色んなことに口を出す癖に、さり気なくあたしに甘い。まあそれは良いとして、こいつ、( 綺麗だよなあ… )今更だけどなんでこんなに綺麗なんだ。

灰色の空にはらはらと舞う白い雪、足元はほんの少し積もったことで疎らにアスファルトが露出した白と黒のマーブルカラー。指定のブレザーの上に黒のコートを着込んだ彼の首には灰色と黒のボーダーのロングマフラー。その端が、長く艶やかなぬばたま色の髪と一緒に揺れる。黒と白を組み合わせているのに地味には見えない、寧ろ彼には良く似合っていた。見事にモノトーンの色合いで占拠された視界の中、白にほんのりと差す赤は自棄に艶やかに思えてきて。
どうして自分よりも色気があるのかな、と甚だ疑問に思っていた所で彼が横を―――正確には此方を向いた。

「そんなに見んなって。そのうち俺の顔に穴が空くぞ?」
「…君が美人なのが悪い」
「美人、ねぇ…」

どうせなら"美形"って言われてぇんだけどな。
女の自分よりもよっぽど綺麗な容姿をした彼はにこり…というよりにやり、いや、にたりと言った方がしっくりくるような笑みを浮かべながらそう宣った。

( …あくどい笑みが似合うこって )

ああもう、本当に心臓に悪い奴だな。つくづく思い知らされる。
呆れ気味に内心呟いても、心臓が忙しなく活動を始めたことは自分自身にさえ誤魔化せない。流石にこのままだと不自然に火照る頬を見られてしまうだろう。なんだか気恥ずかしくて、そうだね美形だね格好良いね、と早口で告げてから視線を逸らすように前を向いて歩幅を大きくした。きゅきゅ、と疎らに積もった雪を踏みしめながら彼から距離を取った…筈なのに、彼はこの精一杯の抵抗を見越していたかのように歩幅を此方に合わせ、隣に並んでくる。

「お前さあ、」
「なに、」

ぐいと腕を引かれて、そのまま抱きすくめられて、視界はブレザーの生地とコートでいっぱいで、コートに付着していた雪の欠片に額が触れてじり、と肌が熱くなる。いや違う、彼の動作のお陰で既に頬は…顔は熱かった。雪の所為にするには些か無理があった。

「俺のこと、すっげー好きだろ」

咄嗟に見上げれば、さっきよりも3割増くらいイイ笑顔を浮かべていた。
ああ憎たらしい。なんなんだその笑顔。そんな不遜な笑みを浮かべて確信し切ったように言い放つユーリなんか、



 

「大好きだよ、ばか」「馬鹿はねーだろ、馬鹿は。ったく、変な意地張りやがって…」「言わなくても分かるでしょ、だって昔からあたしのユーリなんだからさ」「分かってたとしても…言ってくれた方が嬉しいっての」

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