BOOK3
□08.不器用なボクら
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信じられない、信じられないッ!!
先月からこの日だけは休みを取るよって言ってたじゃないの!!ああもう嫌、嘘ばっかり!!
「フレンちゃんのばかあぁーッ!!」
思いきり叫んでみたものの、全然腹の中でくすぶる怒りは収まってくれはしない。
そりゃあね、私だって知ってるのよ?彼は今一番大事な時で、一番頑張らなくちゃいけない時なんだって。
でも、でもね、そうやって我慢してきてかれこれどのくらいになると思う?
一人の寂しい食事だって一人の寒い夜だって、明日を支えに乗り越えてきたっていうのに…!
もう限界!フレンちゃんなんてもう知らないッ!!
…そう言い残して思いきり家を飛び出して来たのが数分前。
追いかけて来ないのが変な所で負けず嫌いな彼らしい。
……怒っている、のだろうか。
「……っ、駄目駄目!!今日は私悪くないもの!!」
………、…でもフレンちゃんって怒ると怖いのよねぇ。
…それに、好きで明日を潰したわけじゃないと思うし。
「…………」
信じられない、信じられない。
僕は借りにも騎士全員をまとめる騎士団長だ。なり方がなり方だっただけに、色々な所からの風当たりが強いのは彼女だって承知の上だったろうに。
今はなりふり構っていられない。だから彼女との約束の日まで奪ってしまったことを、ああしてきちんと謝罪を述べたと言うのにフレンちゃんの馬鹿もう知らない。
「……僕だって好きでそうしてるわけじゃない」
自分だって、辛い時挫けそうな時、明日の彼女とのひとときがあるからと鞭打って頑張ってきたというのに。
そのことを全く自分のことしか考えてない彼女に分かるはずがない。こっちこそもう知ったことか。
……でも泣きそう、だった。
「……いや、よそう。知らないと決めたじゃないか」
………、…でも今まで彼女は文句も何も言わずに支えてくれていた。
僕は彼女に、甘えすぎだったのかもしれない。
「…………」
不器用なボクら
夕食に並ぶは彼の大好物であるたくさんの食事と、
テーブル上の花瓶から溢れんばかりの彼女が好きなたくさんの花。
そしてどちらともなく吹き出して、不器用に笑うのだ。
(…おいフレン、この紙はどーいうこった)(明日一日騎士団長券)(お前って奴はあああ!!)