BOOK5

□17.今更、スキだなんて
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結婚式を翌日に控えているのだがあまり実感はない。それどころか他人事のような感じさえする。所詮親の都合で決まった望まない結婚だ。どうでもよかったのだろう。


実は私には好きな人がいる。彼は幼なじみで初恋の人で、何より大きな存在だ。そして今は外の世界を旅しているらしい。


(また会いたい、な)



そんな考えを掻き消すかのようにドアをノックする音が聞こえてきた。旦那か親か友人か、誰かはわからない。とりあえずその人は私に一人の時間の邪魔をしたいらしい。


「どうぞ」


入って来たのは旦那でも親でも友人でもなかった。予想外の訪問者。


「久しぶりだな」

「ユーリ?久しぶりね上がったら?」


これは神様の悪戯か。結婚前日に好きだったユーリが現れるなんて想像出来るわけがない。

良くも悪くも願いは叶ったのだが明日は結婚式。消さなければならない気持ちがある。それは勿論彼への恋心。


「そういえば聞いたぜ。結婚するんだってな?」

「うん」

「相手どんな人なんだ?」

「よく知らない」

「……結婚するんだよな?」

「親の都合よ。だから別にどうでもいいの。向こうが私を好きかも知らないし」


ユーリは何も言わない。同情なのか私の信念の無さに驚いたのかはわからない。でもユーリにだけは祝福されたくなかったのでこれで良い。


「ならさ、」

「なら何?」

「……俺にしねぇ?」

「はぁ!?」


思わぬ展開に驚きを隠せない。多分今すごく間抜けな顔してる。間違いない。


「少なくとも俺はお前が好きだ」

「今更好きだなんて遅すぎるよ。……私ユーリのこと諦めきれなくなったじゃない。」

「なら責任とるぜ?」

「      」


私の言葉にユーリはにやりと笑みを浮かべOKを出す。こうしてユーリとはまた明日式で会うことになったのだった。



今更、スキだなんて


(なら、花嫁を奪って逃げてみない?)




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