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□第四話 『守る』
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第四話 『守る』
暫くして屋敷の薔薇庭園へと辿りつくと、嘉音君が一人で重そうな肥料を運んでいた。
近付き、私も肥料を一つ持ち上げる。
「え、…名無しさん様!?」
此方に気づいた嘉音君が、驚きの声を上げた。
『うー…ん、重いねえこれ。』
あはは、と苦笑すると、
嘉音君が、
「だ、駄目です!名無しさん様にこんな物持たせられません!」
と妙に焦った声で言った。
『いーのいーの、私がやりたいんだから!』
「しかしっ…」
『大丈夫!!』
「はあ…」
力押しで要約納得させる事が出来た。
嘉音君はちらちら不安げな眼差しで見ながら自分の分を運び始める。
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「…名無しさん様」
それから時間がたち、肥料を運び終わった頃。
夕焼けに身を包まれながら、嘉音君は静かに私の名前を呼ぶ。
『何?嘉音君。』
嘉音君は少し俯いて、バッと顔を上げ、
「名無しさん様は、ベアトリーチェ様には殺させませんからっ…!僕が守ります、生き延びて下さい…」
と、それだけ言い放ち、嘉音君は屋敷の方へと走り去ってしまった。
去り際の嘉音君の眉が、悔しげに歪められていた、様な気がした。
『生き延びて…?』
何、それ。
生き延びてって、それじゃあ今から
殺人が起こるみたいじゃない
ベアトリーチェ?生き延びる?嘉音君は、何を、考えているの?
ベアトリーチェは、爺さんが愛してやまない人だから、知ってる。
何時も何時も生け贄が居る、とか後少し、とか呟いているのも良く聞く。
もし、ベアトリーチェと殺人が結びつくなら、爺さんが、一番怪しい。
ははーん…さては、爺さんが嘉音君に何か吹き込んだな。
そう考えた私は、爺さんへと会うべく夕焼けの中屋敷へと入って行く。
空は、曇りながら風が強く、赤くて、薔薇が燃えている様に見えた。
第四話 『守る』
END