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□極彩色の君
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極彩色の街の中。目に痛い鮮やかな水色の空と煉瓦の橙色が全面的に押し出された建物を見上げた。

『やっぱり明るいな、ここ…』

水色の空に映える真っ白な雲を見ながら呟く。

一応同行者は居るのだが只今そんな私の呟きに返事をする程暇じゃないらしく、


「Break down!」

地面や建物の隙間から湧き出た悪魔達を刈るのに熱を出していた。視界の隅を悪魔が吹っ飛んでいったが、慣れたので無視する

『でも悪魔が出てくると街が歪むのは慣れないなぁ…』

まるで爆発した瞬間を停止した様な形で建物からややずれて宙に浮いている煉瓦を見た。落ちてくる気配は無さそうだ。

「名無しさん!あんまり遠くに行くなよ」

ダンテがエボニー&アイボリーを地面に突っ伏す悪魔に連射しながら此方を見る。私はのんびり返事をして、彼の黒に赤い裏地のコートを見た

形こそ変われども、色褪せない赤。私はその色が好きだ。きらきら輝く銀髪を黒髪に変えてしまったのは遺憾が有るがまあ、たまに銀髪になり見える。本人曰く焦らし、らしい。何だそれ


『ダンテ!』

ふと足元を見れば変な波紋が出てきた。私はそれを後ろへステップで避ける。次の瞬間私が居た所からは悪魔が。

「ハッ、名無しさんを狙うなんて身の程を知らないのか?」

楽しそうにダンテが笑い、エボニー&アイボリーを悪魔の顔面に向け撃つ。近くに居た地面に縫い付けられ、悪魔は瞬く間に蜂の巣となった

『…て言うかダンテも過保護過ぎ』

「レディを守るのは男の役目さ。…あっちのレディは守らねえけどな」

逆に潰されそうだ、と悪魔にリベリオンを突き刺して溜め息をついたダンテ。

あっちのレディとは、勿論私の師匠でも有るオッドアイのレディなのだが

『私だって戦えるもん』

「その目付き昔のアイツにそっくりだ」

粗方悪魔を片付け終わったらしくリベリオンを肩に担ぎダンテが私の目を指差しながら此方に来る。私は軽く頬を膨らませ苦笑するダンテを見上げた

『私だってちゃんと武器有るよ!ほら!』

「俺のおさがりだけどな」

『うっ』

背中に背負ったアタッシュケースを見せればすぐ突っ込まれた。た、確かにレディから貰った時ダンテの、って言ってたけど…!

『もっと未来のダンテから貰った物だから!ノーカウントだから!』

「例え未来と言えども俺は俺」

こんな武器有るんだな、と豪勢なアタッシュケースを触りながら呟くダンテ。

『良い?私タイムスリップして私の方が先の物事知ってるんだから』

「未来の俺はまた銀髪なんだろ?何が有ったんだか」

此方の方こそ何が有ったと叫びたくなる黒髪を摘まみながらダンテがアタッシュケースから目を離す。私は銀髪の方がかっこいい!と言っておいた

「だから、黒でも良いだろ?どうせまた銀髪に戻るんだろうし、こんな色が強い場所で銀髪だったら目立ちにくいだろうが」

『…思考はダンテと同じなのに』

此処で言うダンテは私が一緒に暮らしていたおじさんダンテの事だ。ダンテ今何してるかな…レディが面倒見てくれてると助かるのに


「ほらよ、名無しさん」

『、わっ』

ダンテのピザ箱まみれの事務所を思い浮かべ溜め息を付けばいきなり目の前に赤く丸い物体が入ってきた。…林檎?

「そこの店からかっぱらった」

『おーい』

シャリシャリお構い無しに林檎をかじるダンテ。まあ確かに周りには人は居ないのだけど。


数秒つやつや光る林檎を見つめる。橙色の煉瓦を背景にしたそれはとても赤々としていて、………。

しゃり

『あ、美味しい』

「だろ?俺の見立てに狂いは無いぜ」

既に芯に変わり果てた林檎を持ち何処かに放り投げたダンテを見て頷く。冷たく甘酸っぱい果汁が喉を伝い下に下がっていくのについ顔が弛んだ

『この世界がやっぱり一番食べ物美味しい!』

今までずっと都会の路地っぽい所でピザばっかだったし!

そうダンテに言えば、まあピザも美味いけど俺は野菜も好きだぜ?とおじさんダンテに言わせたい言葉をさらりと言ってのける。

『こんなに食生活整ってるダンテが良いな』

「年老いた俺どんだけピザばっかり食ってんだ」

太ってねえかとやや本気の眼差しで自らのお腹を見たダンテにはは、と笑い太ってないよと返した。

『寧ろ主食女になり始めてるくらいに女と…その、せ、せっ…』

「あー、ヤりまくってる?」

『…私だって事務所に住んでるんだから自重位してよね!!!』



声とか聞こえるんだようわーっと泣き叫ぶ。その様子を見たダンテが私の頭にぽん、と手を乗っけた。


「じゃあ、帰らずに俺の所に居るよな?」

『…………ん?』

一瞬固まり、ずびっと鼻を啜ってからダンテをそろそろ見る。あっ、満面の笑み。

「あれだな、未来の俺も慎重な所有るもんだな」

『ん、え?』

「名無しさんの事が大事って事」

ダンテが少し屈む。目線が合って初めてまじまじ見つめたダンテの顔だが、おじさんダンテとはまた違ったかっこよさで、若いと言うか、爽やかと言うか…


『ち、近いダンテ』

「我慢しろ。…なぁ未来の俺」


いきなりダンテが私の耳に掛かった髪の毛を優しげに退かし、持ち上げたまま口を私の耳に近付け喋りはじめた。吐息がかかる!

「俺も名無しさんの事気に入ったんだ。だから返さないぜ?もし返せても、さ」
『ひっ』

最後に軽いリップ音を立てて私から離れたダンテ。私は勢いよく離れて火照り過ぎた顔を林檎をかじる事により収めていたら、パキン、と何かが砕ける音がした

『え、ああーっ!』

「手が滑った」

音の発生源を辿っていけばダンテの右手の中。リップ音たてた後何か耳に触ったなーとは思ったけど、さぁ!

『何で壊したの!』

「俺のニオイが凄いした、から?」

『訳分からん!』

粉々のイヤリングを見てまたはああと溜め息をつく。これおじさんダンテから貰った奴なのに、無くなった、てか壊されたって言ったら何言われるか…

「まあ俺が新しいの何個でも買ってやるから。こう見えて金は有るぜ」

『……………〜じゃあホットドッグ』

「美味い店知ってる。まかせろ」


『私の新しい武器!』

「俺が守ってやるけど、どうしてもなら作らせる」

『ッ…じゃあ、じゃあ…っ』

「指輪は?」

『ゆび、わ?』

「此処に嵌めるやつ」

ダンテの骨が浮き出た綺麗な手が動き、私の左手を拐い持ち上げ、自然な動作で薬指に口付けを…………

『ぎゃあああ!』

「もう逃がさねえからな」

ニッと笑ったダンテにありし日のアルバムで見た若いダンテが重なる。こ、こんな恥ずかしい事平気でこなすなんて…!


『(どの時代でもダンテってプレイボーイすぎ!!!)』

目の前でにや、と笑ったダンテにまた、溜め息が出た。

<極彩色の君>

(…通信機が壊された)
(昔のダンテは独占欲が強いのね)
(多分俺が黒髪だった頃だよな…、チッ、どうすりゃ良いかな)
((本当名無しさんの事になると面白い位取り乱すわね、コイツ))





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