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□エトワールの告白
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*有名な海外サーカス団シル/クド/ソレ/イユのトリッ/クス/ター夢






「名無しさん」


私が手持ちぶさたにバトンを回していれば、背後から聞き慣れた声。振り向けば案の定其処に居たのはクーザ王国の創立者で、

『トリックスター』

彼のトレードマークでも有る水色とオレンジや白が混ざったストライプの皺一つ無いスーツと、同じ色をねじあわせたソフトクリームの様な帽子。それを見ながらバトンを回していた手を止めた。

『何か御用ですか?』

「ああ。もうすぐ王国に客人がやって来る。イノセントと言う子供だ」

『…じゃあお出迎えしないとですね』

何気に何時ものクールな表情を若干嬉しさに変えながら、トリックスターが魔法のステッキを何処からともなく取り出す。私はバトンをきらきら輝く箱へほおりこみ、本来自分の役割で有るスケルトンダンスの仮面を取り出した。

「あの少年に宝箱の中を見せてやろう」

『久しぶりですね、お客様が来るの。きっとキングやクラウンが騒ぎますよ』

黒い服をクローゼットから取り出し広げる。これは王国に来た際にトリックスターから貰った物だ。


『トリックスターは何を?』

「さしずめ王国への扉の開け方を導く役割、だな」

そう無表情でステッキを奮えば、キラキラとステッキの先から輝く粉が出て、王国のホイールやダブルワイヤー、住民の家や小道具達に降りかかっていった。勿論私の服にもだ。

「名無しさんはスケルトンダンスか。…他にやりたい役割は無いのか?」


『他に、ですか。あんまり無いですねえ…』

小道具を持ちあちらこちらにあたふた駆け回る人達を眺めながらぼんやりと呟けば、そうか、と返される。

「一つ空いている役割が有るのだが…」

名無しさん、やりたくはないか?

トリックスターは身長が高いので必然的に見下ろされながらそう言われた。トリックスターの有無を言わせぬ鋭い眼光に気がつけば顔が縦に動いていて、

「では、名無しさんは今から役割変更。フラフープに行ってもらう。形式上記録が必要なので此処にサインを」

一気に捲し立てられ既に手には羽ペン、持っていた服は浮いて独りでにクローゼットに帰り私の目の前には机の上に乗った書類が。

『…こんな所で魔法使っても…』

「魔法は然るべき時に使う物。しかしあまりにも使わなくては魔法が錆びてしまう」

『…ええ、まあトリックスターがそう言うなら良いですけど』

饒舌なトリックスターに何か上手く丸め込まれた感じになりながら羽ペンを取る。そして目の前の羊皮紙を見れば、何故か違和感。

『あれ…』


ペン先の名前を書く欄から目線を上にずらせば、目に入ってきたのは「婚姻届」と言う文字。


『婚、姻?』

「………」

『トリックスター、書類を間違えて…』「名無しさん」

書類をひらひらと揺らしながらトリックスターに見せると、書類を持つ手がトリックスターの手に包まれる。暖かい。

「いや、良いんだ。クラウンの言う通り事を運んでみたが私はこの様に騙す形で君とは結ばれたくなくてね」


やはりこれは無しにする、といきなり婚姻届が消えた。問い詰めようと口を開いたが、それは彼の人差し指で塞がれる。

『……ん、』

「私から言おう」

まるで獲物を狩るような虎の目付きで射抜かれる。私は少し身動ぎをした

「…君を、愛している」

ぱち、トリックスターが瞬きをして私はその言葉の意味を理解しようとする。す、と彼が離れた

「ではまた後で。名無しさん」

『…………ットリックスター!』

バトンを握ったまま離れていく彼に呼び掛ける。相変わらずピンと伸びた背のまま振り返り、私を見つめるトリックスターに柄でもない言葉を投げ掛けた

『さっきの書類、…サインしても良い、…です……よ』

尻すぼみになっていく言葉を聞き取れたのか、トリックスターは笑った


《エトワールの告白》

(名無しさんとトリックスターが結婚したぞー!)
(わーい!僕の作戦成功だ!)






果たして需要はあるのか…(泣)
でもかっこいいでしたトリッ/クス/ター!すき!
 

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