黒バスで色々パロ中身

□異変
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これは不思議な物語

ある女の子が山に囚われた物語



「さつき、ちゃん?」



呪いに呪われた物語――





合宿で来た、山の中の別荘。鬱蒼とした木々に囲まれ辿り着いた別荘はどこかじめじめしていて、それで物静かだった

帝光中のバスケ部員が使う体育館とは少し、離れている。そして私とさつきちゃん、後キセキの世代と呼ばれる彼等は別荘へ練習を終えて戻った。因みに違う部員達も人数で分割してそれぞれ個々に離れた別荘で寝泊まりする手筈だ

そして、トランプや、怪談。様々な事を終えて私とさつきちゃんは別室に移った。…それは、勿論男の子とは流石に同室で寝泊まり出来ないから。


そして、深夜。窓ガラスから何も見えない別荘の別室の中突如さつきちゃんが小さく息を飲んで体を強張らせた


「佳奈子、ちゃん、」

どんどん顔が真っ青になっていくのにただ事では無いと立ち上がる。さつきちゃんの近くに移動して肩を抱いた


「さつきちゃん、大丈夫?具合悪い?」

「…ち、がうの」


何か、寒い。

さつきちゃんが私の手を痛い位握り締める。ふるふる震える彼女の手に私もひやりと冷気が肌を触れるのを感じた

「……!」

ぞぞ、と。

部屋の壁が赤黒く浸食する。上から、下へ、

「なに…これ」

「さつきちゃん立てる?」

私はさつきちゃんをきつく抱き締めながら扉へ移動した。ドアノブを掴むが捻れない。ドアノブも錆の様な物で覆われた

「(照明も…)」

さつきちゃんの眼から涙が溢れる。照明も赤く覆われて部屋全体がまるで血をぶちまけたようになり思わず顔をしかめた

「…なんでいきなり」

私はさつきちゃんを守らなくちゃと言う使命感でかろうじてこの不可思議に堪えられる。けど、さつきちゃんは本格的に泣き出した

「やだ…!これ、夢?だよね、佳奈子、ちゃん」
「……大丈夫、さつきちゃん」

唇を噛み締めてさつきちゃんの頭を掻き抱く。

彼女に、もう何も見せない為に。




赤く変色した部屋で唯一違う色のもの。それは外への窓。





その揺らぎない夜の黒が、今まさに変色していた。



ぺたり。小さく手形が付いたのだ。それは白く残り、私はさつきちゃんの顔を隠したままそれを睨んだ


「さつきちゃん、目瞑ってて」

手は握ったまま、鞄から携帯と御守りを取り出す。御守りは何時かの緑間君から貰ったラッキーアイテムだった。それをさつきちゃんに持たせて私は携帯を開いた

「っ、電波、有る」

即座に滑る指先で電話帳を開く。さつきちゃんを抱き締めたまま携帯を耳に当てた

「さつきちゃん、今から赤司君に電話するね。こういうの強そうだし」

頷くさつきちゃんに、既に私達はこれが夢で無い怪奇現象である事を認識していた。プルルルル、プッ。電話が繋がった音がする

「あ、赤司君!?」《、白石!》

少しだけ安堵した様な彼の声に私も顔を綻ばせて、それから赤司君の背後で聞こえる切羽詰まった声に息を飲んだ

「赤司君の部屋、どうなってる?」

《赤くなってる。…どうやら白石達の部屋もだね》

「ん…取りあえずさつきちゃんに緑間君の御守り持たせたんだけど、っ」

そう言われて思わず窓ガラスを見やって、ビクリと肩を震わせてしまった。

一つだった手が無数に増えていた。大小様々、窓ガラスが白く染まるのに戦慄を覚える

「え…」

いつの間にかさつきちゃんが私の腕の隙間から顔を出していた。しまった、窓ガラスを見たかな、と彼女を見ればさつきちゃんは私の後ろを見ていて。

「さつきちゃん…?」

「あ、や、」

《…白石?…白石!桃井!》

「や、嫌、」

「さつきちゃん!」

さつきちゃんの大きく見開かれた目。それに写り込むモノを、私は見た

《白石!》

さつきちゃんを包み込む様に抱き締める。携帯を握りしめて、彼女を守る為に。



あ、ぁ、あはは、




耳元で聞こえた幼くて舌足らずな声と首筋に触れた冷たい手に、私は余計さつきちゃんを覆って。


「佳奈子ちゃん!」

《白石何が起こってるんだ!!》

<あははははははははは!!!!!!!!!>


「ッ、あ、あァッ!」



さつきちゃんから引き剥がされる様に首を引かれて。さつきちゃんの泣く顔と、赤司君の声、それに女の子の笑い声が鼓膜を震わせ視線を揺らがせ、



ばくりと地面が黒く割れた瞬間、私は絡み付いた腕を視界に入れながらさつきちゃんの光る桃色の髪に手を伸ばして、届かなかった





ブツン、ツーツーツー。

赤司が携帯を耳に当てたまま目を歪めた。傍に居た緑間が盛り塩をしながら恐る恐る、と唇を震わせる


「桃井と、白石は」

「……………ッ」

赤司が唇を噛む。緑間は壁に向かって塩を撒く黄瀬、青峰、紫原と青峰に寄り添って震える黒子を見て、信じられない、とでも言うように赤司を見た

「…俺達の部屋と、彼女達の部屋。多分浸食の速さが違う」

「…何、?」

「俺達はまだ半分も赤くなっていないだろう。盛り塩も有るしな」

赤司がそこら中で光る白い塩を見て呟いた

「…白石達の部屋には何も無かったんだ。白石が切羽詰まってたから、多分そうだろう」

赤司が項垂れて腕をダランと落とす。緑間は言われようの無い喪失感に盛り塩を落としそうになった

「じゃあ、白石達は…」

「この別荘の霊に取り込まれた」

赤司がきつく目を閉じる。緑間が何だと、と呟いて、それで後ろで慌てていた黄瀬が振り向いた

「赤司っち、それ、どういう事ッスか」

「…皆聞いてくれ。ああ、塩は撒きながらで良い。…白石達が消えた」

「……………え、っ」

黒子が強張っていた表情を更に強張らせて、黄瀬は不安に染まっていた表情を更に歪ませた。

青峰と紫原は呆然とその言葉を聞いていた。

「……嘘、だろ」

「…佳奈子ちんとさっちん、何処行ったの」


紫原が無表情で赤司に問う。赤司は首を横に振った

「ひ、っ」

黄瀬がもう一度塩を巻こうと窓ガラスを見た瞬間悲鳴を上げる。五人がその声に反射的に窓ガラスを見た



女の子、が。



女の子が両手をべたりと窓ガラスにくっつけて、此方をじっと見ていた。髪は黒く、目は限りなく見開いて。薄く青い唇はニタリと半月に裂けた

<あ、は、あはは>

「っコイツがこの別荘の…」

「…分からないです」

黒子が青峰に寄り添いながら携帯を見ているのが分かった。


「さっき、こう言うのに詳しいオカルト板でスレ立てしました。くろちゃんねるです」

赤司と緑間が「ああ、」と呟いた。黒子がそのまま続ける

「僕達の説明、部屋の状況と、佳奈子さん達が盛り塩無しで消えてしまった事、書いたんです」

「……それで?」

少女が窓ガラスを叩き始めた。ぐずぐずと黒く染まる塩に気付いた緑間と青峰が盛り塩を囲む様にして塩を撒く

「その女の子は、私怨ごときの幽霊じゃないかもって、だったら佳奈子さんがヤバい、って」

「、そのスレ見せて」

必死に頷く黒子から携帯を貰った。スレタイトルは【助けて】別荘の部屋が突然赤く染まりました【下さい】。赤い部屋と聞いて、だのどうでも良いスレは吹っ飛ばして、関係有るスレを流し読みする



451>

それ、今調べた。女の子だよな?

黒>

はい

452>

普通なら私怨の幼女かもだが…お前らの止まった別荘からして駄目だ

453>

私怨の幼女って何かシュールだな

454>

>453ちょっと黙れ

455>

多分それあれだ。簡単に言えば昔の風習で殺された幼女達の怨念、無念の塊が土地神になっちゃったやつだ

456>

なっちゃった…だと…

457>

それは昔その別荘が有った辺りの村で大飢饉が起きて、増えすぎる子供に対して村長が下したんだってよ。生まれてから5年以内には殺されていたらしい

親や兄弟への寂しさが村全体への怨念へ変わったパターンだ


その村は結局、過疎化して無くなったんだけど…もしかしたらその別荘の何処かにお札とか、石とか有るかもな

黒>

ありがとうございます

部屋から出れないのでお札等は探せませんが…幽霊がお姉ちゃんと言い出したのでその線で間違い無さそうです





そこまで読んで赤司は窓ガラスを見た。笑うだけじゃなく、お姉ちゃんと言い出した辺り確かにこの土地神と似ている

「俺も読んだが…神とは」

厄介だ。その緑間の辛辣な顔におなじくスレを読んでいた青峰が無言で頷く

<ねえ、ねえ>

「……黒子はくろちゃんねるで情報収集!各自何か有ったらスレに書き込めるようにスレを開いておいてくれ!」

<ねえ、見て>

「良いかこのままだと俺達も取り込まれる可能性が高い!塩を分割して持って、何か有ったら撒け!」

<わたしたちの、おねーちゃん、だよ>

「…あ」

黒子が悲しそうに眉を歪める。赤司は敢えて無視していた幼女の声に反応して窓ガラスを見てしまった

<ふふ、うふうふふ、やさしいね、おねーちゃん。桃色のおねーちゃんに一つだけのおまもりもたせたんだよ>

「…佳奈子っち!」

窓ガラスを隔てて何処か、違う風景が写り込む。幼女の声が響き、窓ガラスの景色が動いたかと思えば、二人ばかりの幼女に抱き締められている佳奈子が写った。場所は陰鬱とした座敷で、こんな場所は別荘には無く。

パシャリと黒子が震えたまま携帯で写真を取って、スレに書き込むのを見て確かに、と緑間が頷いた

「何か分かるかもしれないからな…」


黒子がええ、と呟く。

「佳奈子ちん顔色悪い…」

「やべぇな…さつきは御守り持ってるらしけどよ」

「俺が佳奈子に渡した物なら強力なのだよ」

塩を青峰から渡されて懐に仕舞う緑間達。

「…?」「何スかこのレス…」

黄瀬と黒子が同じく携帯を見ていて、首を傾げた。赤司も携帯を広げれば一人、盛大に注意喚起している人が居て。

651>

今写真見たがやべえぞ


652>

ヤバいな…確かに

653>

此処までクッキリの心霊写真俺初めて見たよ…(´;ω;`)

654>

クッキリもそうだが黒、黄、お待らも相当ヤバい





そこまで読んで赤司は何かとてつもなく嫌な予感がした。そう、それは秒読みの速さで迫って来ている

「…本当だ」

青峰が黒子と一緒にスレを見ていて溢す様に呟く。キセキ全員が携帯を見た



黒>

>654

何がですか


655>

いいか心霊写真ってのは怨念が強ければ強い程写りやすくなるってもんだ

テレビで見た事有るだろ、うすぼんやりしたやつ。アレもアレで相当だが、











黒、お前の写真はハッキリ見えすぎてる

多分幼女すげえ近くに居ると思う







その言葉を見た瞬間、一際大きく幼女が笑って、ばくり、床に黒い穴が開いた



(以下音信不通になった黒、黄を呼び掛けるスレが流れる)

スレが1000に達しました次のスレを立てて下さい―――





あとがき

この連載のくろちゃんねるは本家様には似ても似つかない様なエセくろちゃんねるです(´・ω・`)

某支部でくろちゃんねるを見て勢いで始めたのは良いですが、ホラーにできるか心配…だ…な…

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