銀魂小説

□そうやって 俺たちはまた 死にに行く
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逃げて欲しかった。
家族の下へ帰ってほしかった。
誰も悲しませたくなかった。
誰も死んでほしくなかった。

ただ、生きていてほしかった。

どんなに策を練ろうと、どんなに前線に出て俺が戦おうとだめだった。
それを分かって俺は皆に退避命令を出した。
皆に『逃げろ』と、ただ一言言った。
「もう俺たちはだめだ!・・・・・みんな・・・・・逃げてくれ!!」
はじめは皆目を丸くしていた。
そりゃ、『どんなに苦しい戦いでも最後まで諦めない』て、俺が言ったのだから。
その俺が『逃げろ』と、言ったのだ。皆驚くだろう。
講義の声が多く聞こえてくる。
「総督!!何言ってるんですか!そんな、戦いをホッポリ出して逃げれません!!」
「そうですよ!高杉さん!俺たちはまだ戦えます!!」
「いいから!!俺が殿を勤める。・・・・・掘羽(くつわ)お前がみんなの道を作ってくれ」
いきなり自分の名前が出され掘羽はビクリと、肩を揺らした。
俺は掘羽を安心させようと出来るだけ優しく・・・・・・ふんわりと笑った。
そう、ここが戦場と分からないくらい優しく笑って見せた。
「・・・・・大丈夫だ。敵は俺たちの前にいる。・・・・・その逆に逃げるんだ。敵は殆どいない。・・・・・出来るな?」
掘羽は何か言いたそうに口を開きかけて、閉じた。
いや、閉じさせた。俺が急に空気を変えたからだ。
それは何者も口答えをさせない、そういう空気を放ったからだ。
「・・・・・いいな、逃げるんだぞ。引き返して戦おうなんて考えるなよ」
そして俺は念を押すように殺気を放って言った。
「引き返したら・・・・・そいつぁは俺がすぐさま斬ってやる」
皆が息を呑むのが分かった。
これで大丈夫だろう、俺は安心して殺気を引っ込め少し気を緩めた。

それがいけなかったんだ。気を緩めてしまったから。

気が付いたら隊員全員が俺の横を通って敵の方へ走り出していた。
俺は急いで隊員たちを呼び止めようと声を上げた。
「お前らッ!やめろ!・・・・・・っ・・・行くなぁ!!」
それでも俺の声は隊員たちには届かなかった。


それからはあまり覚えていない。
ただ、誰も息をしている者のいない戦場で周りに散らばる人と天人の死体を見て、「あぁ、相打ちなんだ」と俺は一人納得した。
仲間が戦っていた。
俺はその光景をただ見ていることしか出来なかったのだ。

俺が皆を殺したんだ。
俺は自分の持っていた刀を自分の首に添えた。
そして腕に力を込め―――――


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