銀魂小説
□当たり前
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【当たり前】
曇天の空が広がる荒野。
辺りは焼け野原。
上がる煙は灰色で、昔はこの煙を吸うだけで噎せていたが今では何も感じない。
それが当たり前になってしまったから。
戦場
悲鳴
死体
赤
朱
紅―――
当たり前な日常。
そんな最悪な日常でも守りたいもんはあるんだ。
「銀時」
「…よぉ、高杉」
洋風の軍服を着た高杉が林の中から出て来た。
林といっても緑が茂っておらず、枯れ果てた木が申し訳ない程度に生えている場所だ。
俺は河原の坂の上に座ったまま、高杉を仰ぎ見た。
「生きてたのかよ」
「お前こそ。…つか、何だよその格好は」
血まみれの高杉を見て呆れる。
高杉は自分の恰好を確認し、軍服で顔を拭いた。
「…返り血だ。くそっ気持ち悪ィ」
「…あそこ。川あるから洗ってこいよ」
俺が指差した方をちらりと見て、高杉はまた「気持ち悪ィ」と呟いた。
そして、俺を通り越して河岸まで降りていく。
そんな高杉の後ろ姿を俺はじっと見つめていた。
不意に高杉の声が俺にかかる。
「これ洗っといて」
「うおっ?!」
バサッと何かを投げ付けられ、俺は慌ててそれを掴む。
見るとそれは高杉が着ていた軍服で、高杉を見るとインナー姿になって川にバシャバシャと入っていっていた。
俺はまた慌てた。今は1月で真冬だ。そんな中、高杉は川に入っているのだ。
「高杉ッ!おまっ、何やってんだよ?!」
「…何って、水浴びだけど?」
「んなの、見ればわかるわっ!こんな時期に何やってんだって言ってんだよ!!風邪引くぞッ」
「んな、ヤワじゃねぇよ」
「馬鹿野郎!一番身体弱いクセしやがってッ」
俺は急いで高杉を川から引きずり上げる。高杉が抗議の声を上げるが無視だ。俺の必死さが伝わったのか、それとも寒くなったからなのか、暫くすると大人しく従っていた。多分後者だろう。
白い羽織りを脱ぎ、高杉に被せる。
「汚れてるけど暫く我慢しろよ」
「…」
ギュッと羽織りを掴み、包まっている高杉を見、俺は焚火の準備を始めた。
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