銀魂小説

□猫と猫バカ
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【猫と猫バカ】


小鳥がさえずる朝。
漸く朝日が昇りきった頃、俺はまだ夢の中。
そんな俺に近付く、黒い影があった。
ペロペロと顔を舐めまくるザラザラとした濡れた感触が気持ち良い。
だけど、ずっと舐められ続ければ眠れないもので、されるがままだった俺は勢いよく起き上がった。
そうすれば俺の上から黒い物体が「に゙ゃ〜!」と声を上げて転がり落ちる。


「…何やってんの?」
「にーぅ…」


黒い物体――晋助は倒れた体勢のまま、大きなつぶらの隻眼をクリクリさせ一声鳴いた。

つい先日拾って来た黒猫は、巷を騒がす天下のエロリスト―テロリストの高杉晋助激似で人間をベースにした天人。
髪の色と同じ紫がかった黒色をしたネコミミに同じ色の艶やかな毛並みの尻尾。
人間の赤ちゃん程度の大きさで愛嬌がある。
左目は高杉同様、清潔感がある白い包帯で覆われている。

転がったままの晋助を掴み、抱き込む。
この可愛い子猫は俺に抱かれるのが好きらしく、小さな手で俺の服を掴み、胸にグリグリと頭を擦り付けてくる。
その様が何とも可愛らしくて、そのまま死んでもいいくらいは思っていた。


「銀さんッ!何してるんですか!!早く起きてくださいッ!!」
「新八ィ…テメェ、晋ちゃんとの甘い一時を邪魔するたぁ、いい根性してんなぁ!!」


突然の乱入者に、俺は開かれた襖に立つ新八に向かって声を上げた。


「晋さん、起こして来てって言ったじゃないですか」
「にー!にー!」
「あらら…銀さん無視?凄みとかしたのに気にも留めませんか…晋ちゃ〜〜ん!慰めっぶばべ!!」
「おはようヨ〜!ほらっ早くするアル!ご飯冷めちゃうヨ」


無視され、軽く傷付いていた俺に神楽がトドメの飛び蹴りを後頭部にクリティカルヒットさせ、着地する。
その時に俺に抱かれていた晋助を回収するのも忘れない。


「晋助〜!私と一緒にご飯食べるネ!」
「にゃ〜あ!」
「しっ晋ちゃ〜〜ん!」


後頭部の痛みに耐えながら必死に手を伸ばしたが、空しくも宙を掴むことしか出来なかった。
俺は悲しみのあまりうずくまる。
本当に涙が出そうだった。


「銀さん、早く起きて下さいよ。食器片付かないでしょ」


結構冷たい新八の言葉に俺は本気で少し泣いた。





結局誰も慰めに来てくれる事なく、新八のオカン的注意によりリビングに入った。


「もうっ早く食べてください!みんな食べたんですよ?片付かないじゃないですかァ!」
「へぃへぃ、スイマセンねぇ…て、あれ?晋助と神楽はどうした?」
「二人なら定春の散歩に行きましたよ」
「さっ散歩?!銀さん置いて二人だけでェ?!」
「散歩ぐらい良いじゃないですか」
「よくねぇよ!お前っアレだぞ?!大好きな子を友達に取られた気分だチクショー!!」
「はいはい…いいから早く片して下さいよ」


親が子に注意をするように、呆れ気味に新八が言う。
俺はちょっと傷付きつつ、朝食を開始した。





「ただいまヨ〜。神楽様と晋助と定春のお帰りネ!」
「んにゃ〜!」
「わんっ」
「晋ちゃ〜ん!もう銀さん淋しかったぁ!」
「にーあぅ」


可愛らしく鳴いている晋助に抱き着く。
朝に少しだけ抱き締めた晋助の体温をじっくり味わう。
青空の下を歩いて来たからかだと思うがお日様の匂いがしてほんわかと和む。
そんな俺の姿を見た新八と神楽が呆れたような顔をして口を揃えて言葉を吐き捨てた。


「「気持ち悪ぃんだよ、猫バカが」」

「……」
「にぃ?」


俺は猫バカでもいいもん、と思いながら『気持ち悪い』という言葉に地味に傷ついていた。
俺が落ち込んでいるのに気付いたのか、晋助がそっと頭を撫でてくれた。
それが嬉しくて俺は晋助をぎゅっと抱き締めたまま、本日二度目の涙を流した。



終わり



ただ単に『にゃあ』と鳴く高杉さんを書きたかっただけである←



2009/05/31 潤
 

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