銀魂小説

□会いたい理由と会えない理由
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年に一度だけ会うことを許される二人は一体どんな気持ちでその日を待ち続けるのだろうか。


【会いたい理由と会えない理由】


俺は万事屋唯一の通信機器を片耳に当て逢瀬を楽しむ。
楽に会うことの出来ない恋人とのただひとつのコミュニケーション手段。こんな物しか自分達を繋ぐ証がないと思うと泣けてくる。
機械音混じりの愛しい声を聞きながら俺はしきりにカレンダーを見つめていた。
丸の付けられた日付。
それは恋人達にとって何を意味するのか。

「いやだからさ、たまにはデートでもしませんかって言ってんのよ?どう?」
『どうっつわれても…何日っつったっけ?」
「7月7日!デートにはうってつけの日だろ?」
『7日、7日…っと、あ、予定入ってらぁ。鬼兵隊の奴らと花火大会すんだよ』
「ちょっ、まさかでっかい花火打ち上げる気じゃねぇだろうな!?」
『粋だろ?』
「不粋じゃボケェェェ!!天の川とミスマッチだろマジで!」

若干(?)ズレている恋人の発言にムードもへったくれもないな、と肩を落とす。
攘夷戦争中はムードなんて気にしている暇はなかったが、今の江戸ならハチャメチャではあるが、それなりに平和だ。ムードを気にしたって江戸っ子の粋な計らいになるだろう。
殺伐とした関係が今ならとろけるような甘い関係になれると思うわけです。
俺はなんとしてもその日を空けてもらおうと猫撫で声を出す。

「ねぇ〜晋ちゃ〜ん?銀さんの事愛してるでしょ?だったらさぁ、仲間より恋人優先してよぉ〜」
『だぁめ。俺の計画だ。今更変えらんねぇよ』
「そこをなんとかぁ!」
『無理なもんは無理。あ、今から軍議があんだ。切るぞ』
「ちょっ待って!ねっねっ!考えてもみてよ!天の川を見ながら月見酒…最高じゃね!?」
『…!月見酒…』
「7日は晴れるらしいし!美味しいお酒用意しとくからっ」
『酒…』

高杉の心がグラグラと揺れているのわかる。
結構誘惑に弱い高杉はちょっと大好きな物をちらつかせてやればすぐに傾く。
だが今回は相当大事な事なのか、かなり悩んでいるようだ。

「どーする晋ちゃん?」
『うーあー……あ?…あぁ、わかってる…』
「…?高杉?」
『やっぱ無理。じゃあ切るから』
「え゙?!ちょっ」

ブツッと遠慮なく切られた電話からはツーツーと繋がりを断ち切られたことを示す音が鳴り響いている。
今ほどこの音が虚しく感じられることはない。
俺はうなだれたままチンと受話器を置いた。

「はぁ…寂しくて死にそう」

実は俺って兎だったのかな、と訳のわからないことを思いながら、椅子の背もたれに体重を預け、顔を抑えてため息をついた。



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