銀魂小説

□気恥ずかしさは拭い切れないけど
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小さい頃は姉上と一緒に誕生日を祝った。
少し成長すると近藤さんや土方畜生がそれに加わった。
そして今は―――。



【気恥ずかしさは拭い切れないけど】



昔は大人に近づけるのが嬉しくて、誕生日が来るのを心待ちにしていた。
江戸に来てからは誕生日を気にしたことなんてなかった。
気にしている暇なんてなかった。
でも姉上が死んでからは誕生日を迎えることが恐ろしくなってしまった。
あの人がいないということを如実に実感してしまうから。


だから取り敢えず、死んで下せぇ、土方さん。


どっちゅーん、とドロンジョ達がお仕置きされた時のような、簡略的な爆発絵図で表現される爆発が起き、土方さんが吹き飛ぶ。
だが、あんなもので死なないのがあの男だ。
トドメとばかりにバズーカを一発お見舞いしておこう。
バズーカを構え、土方さんが居そうな場所に向けると、下から物凄い衝撃が加わりバズーカが上へ吹き飛んだ。

「あー、おニューのバズーカがぁ」
「げほっ!…毎回毎回こりねぇ奴だなテメェはッ!」
「アンタを殺すまで俺はどこまでも走り続ける!!」
「カッコイイなぁオイッ!!」
「そーゆう訳なんでぇ、俺の仕事代わりにやっといて下せぇ〜」
「はぁ!?ちょっ!」
「アディオ〜ス」

俺は爽やかに手を振ってその場を後にする。
遠くで土方さんが何かを言っているようだが、まぁ気にしないに越したことはない。
どうせ罵声か何かだろうし。
晴天の青空の下、俺は口笛を吹きながら悠々と江戸の街へと繰り出した。




「「あ」」

甘味屋の前に派手な着物の男がいると思い見れば、男も俺の視線に気付いたらしく顔を上げ、声を被らせていた。
俺は偶然会った男に片手を上げながら近付く。

「いやぁ〜奇遇ですねぇ、テロリスト様」
「全くだなぁ、幕府の飼い犬」
「今日はしがない一匹狼でさぁ」
「俺も今はただの市民さ」
「遊女の間違いじゃないんですかィ?」
「殺すぞ糞餓鬼」

軽く言葉遊びをし、俺は男――高杉晋助の腕に手錠をかけた。

「――え?」
「えーと、甘味屋の前にて午後3時…めんどくせぇや…とにかく過激派テロリスト高杉晋助逮捕〜」
「あっなっ、なんでっ」
「俺警察、アンタテロリスト。捕まえるのは当然でしょう?」
「いつもは捕まえねぇのに!」
「よく考えたらエロテロリストに手錠ってエロいですよね。そんなわけで」
「はぁ!?」

高杉の細くて白い手首に無骨で重々しい手錠がかけられているとゾクゾクする。
しかもそれがあの過激派テロリストの高杉晋助となると尚更俺のS心に火がつく。
一目があるので着ていた隊服の上着を高杉の手に掛け、手錠を隠し、肩を抱く。

「まぁ、ここじゃあ何なんで屯所行きやしょうか」
「ちょっ、まっ」
「すと〜〜ぷ」

甘味屋の中からアンニュイ声が聞こえ、俺と高杉はそちらへ振り返る。
そこにはみたらし団子を片手にモチャモチャ食べている旦那が居た。
旦那が俺の手を払い除け、高杉を後ろから抱きしめる。
手に被せられた隊服を捲り、『あーあ、やっちゃったねぇ』と笑って言った。

「だから油断すんなって言ったんだよ」
「うるせぇ。これでもコイツのこと信用してたんだよ」
「オイオイ、敵さんに対して“信用”はちょっと危機感なさ過ぎるんじゃねぇのー?」

ちゃら、と手錠を弄る旦那を高杉がバツの悪そうに顔を背けている。
いつ見てもこの二人は面白い。
掴みどころのない旦那が、高杉が傍にいるとその心が嫌というほど伝わってくる。
いや、わざと分かるようにしているのかもしれないが。
それに獣と形容詞されやすい高杉も旦那と居ると可愛い子猫へと成り下がる。
だが、それでもプライドだけは高い為、俺の征服心は一向に変わりはしない。
お互いがお互いを信頼しているからこそ、その心を曝け出すことが出来るのだろう。

俺だって、姉上の前では素直になれた・・・。

そう思い、俺ははっ、と我に返る。
今でも姉上のことを思うと自然と涙が止まらなくなる。
流石に人前で泣くわけにはいかない。
俺はぐっ、と力を込め、無理に笑う。

「旦那ぁ。ちゃあんと高杉さんのこと見ててあげなせぇよ?土方さんみたいな空気読めない奴が高杉さんを捕まえたりするかもしれませんからねぇ」
「じゃあ、高杉の手に掛けられてるコレは一体何かな?」

旦那が高杉の手を掴んで目の高さまで上げ、指を差す。
ちゃら、と金属が擦れる音が鳴った。
俺はにっこりと笑い、ポケットから手錠の鍵を取り出し投げ渡す。
見事にキャッチした旦那が器用に高杉の手を掴んだまま手錠を外した。

「ジョークですよ、ジョーク」
「にしては目が本気だったよ、総一郎君」
「総悟でさぁ」
「ほら、コレ返すぜ」



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