銀魂小説

□雨降って笑顔咲く
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大切な時間はいつまでも形にして残しておきたいもんじゃろ?



【雨降って笑顔咲く】



どんなに厳しい状況でも、笑顔を絶やさない人。
彼が居るだけで、心の雨は笑顔を咲かす為に必要なものに変化した。



「ホラ、酒だ」
「なんじゃあ、晋助!珍しいのぉ、おんしが人に酒ばやるなんて」
「今日はお前の誕生日だろ?」



特別だ、とかっこよく笑う高杉から酒を受け取り坂本は嬉しそうに笑って頬にキスをした。



「晋助ぇ〜!わしはほんにいい子を息子に持ったぜよ!嬉しいぜよぉ!」
「誰が息子だ!……喜んでくれてよかったよ」
「よし!晋助!金時とヅラぁ呼んで宴会じゃあ!早くこの酒開けるぜよ!」
「お、おい辰馬!?引っ張んなよっ」
「あっはっはっ!」



根城にしている寺に坂本の笑い声が響く。
高杉はいつも以上にテンションの高い坂本を見て小さくため息をつくと飲み過ぎんなよ、と珍しく心配するような言葉をかけ、二人は銀時と桂のいる部屋へと向かったのであった。





四人は銀時の部屋に集まり、酒を酌み交わしていた。
坂本の周りには苺とつまみが置かれており、どうやら銀時と桂からのプレゼントのようだ。
上機嫌の坂本に酌をしてやりながら高杉が銀時の持ってきた坂本へのプレゼントの苺を一つ摘んで食べた。



「どう?美味しいだろ」
「あぁ、甘くて美味い」
「オイ銀時。それは坂本へのプレゼントであって高杉に食べさせるものではないのだろう?」
「そうだけど、晋ちゃんと苺の組み合わせって可愛くない?銀さんは大好きですマジで」
「わしも好きじゃあ。ほれ晋助!たーんとお食べ〜」
「ん…」



ペットの世話をするように坂本が苺を一つ摘んで高杉の口の中に入れる。
銀時がしたなら鉄槌ものの行為だが、相手が坂本だと何故だか高杉は逆らえず、そのまま苺を食べていた。
銀時はそれを見ながら頬を膨らますが誕生日だから特別だ、と目をつむった。

四人で過ごす長閑な時間が坂本は大好きだった。
この時だけは戦争などという恐ろしい現実に目を背けることが出来るからだ。
だが、それでも坂本の心が晴れることはない。
美味しそうに苺を食べている銀時も、酒を飲みながら笑っている高杉も、やったものを自分で消費するなと呆れた顔をしている桂も、心はいつも曇り空で決してこの戦争が行われている期間中、彼らの心に太陽が上がることはない。



「(だからこそ)」



坂本は三人の顔を見て、大きく笑った。
曇り空が続くのなら、雨が降り止まないのなら自分がみんなの太陽になればいい。
笑顔があるところに太陽はあがるのだから。



「写真でも撮らんか?」



大切な仲間との時間であるからこそ、形にして残しておきたい。
こんな戦争のない、未来のために。
この写真を見て、遠い未来に太陽を上げるために。






「頭。もうすぐ地球に着くぜよ」



宇宙船の中にある坂本の部屋に陸奥がいつも通りの仏頂面で入ってきた。
坂本はベッドの上に寝転がったまま、手に持ったものを見つめて笑っていた。
陸奥が首を傾げて近づき、覗き込む。



「なんじゃ、それは?写真?」
「おう、陸奥。昔の写真じゃあ」



室内でも気にせず掛けられたサングラスの隙間から坂本の目が覗く。
にかっ、と笑い坂本は珍しく興味深そうに見ている陸奥に写真を渡した。
そこには今よりも若い四人の英雄が写っており、戦争中だったというのにみな、一様に楽しそうな笑みを浮かべていた。
坂本は素敵じゃろ、と陸奥の顔を覗き込んで聞く。
その顔は懐かしさに彩られ、彼がどれだけこの仲間たちを大事にしていたか伺えた。



「ほんにおんしは昔っから間抜け面しちょったんじゃなぁ」
「あっはっはっ!間抜け面は酷いぜよ陸奥!ほんに気の強い女じゃ!」
「ふん。…もうすぐ地球に着くと言ったじゃろ。そんなもので気分をまぎらわさんでも旧友たちに会えるじゃろうが」



陸奥の言葉に坂本は驚きに目を見開いた。
心を見透かされた、と坂本は声を上げて笑った。



「あっはっはっ!勘の鋭い奴じゃあ!結婚してくれ!」
「玉ぁ抜くぞ、色情魔」
「あっはっはっ!なんじゃこりゃあ!目からなんか流れてきたぜよ〜」



宇宙船に坂本の笑い声が高らかに、高らかに響き渡る。
船員たちがその声に触発されたかのように自分達の頭と同じように高らかに、高らかに声を張って笑った。
どこにいても坂本の笑顔は太陽のように皆の心を照らしていた。



終わり



辰馬さん誕生日おめでと〜♪
この小説で何が伝えたかったかというと辰馬さんってあの三人にとってとっても大切な人だよねってことです。
彼が居なければ攘夷戦争中ずっと喧嘩してただろうなぁ、って思ったわけです。
だから影が薄いとか、忘れてたとか、人気投票の順位が下がっていたとか、そんな可哀想なこと言っちゃいけないと思うんです。
彼は縁の下の力持ちなんだから表に出てこなくていいんです。順位が下がっててもいいんです。黒子さんなんです、辰馬さんは。
だから皆さん、辰馬さんのこと忘れないで誕生日祝ってあげて下さい。

2009/11/15 潤

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