銀魂小説

□歪んだ愛の物語
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―――どうして??なんで??



高杉は何度も考えた。
混乱して頭が回らない。
ただ、この状況だけは嫌というほどわかっていた。



押し倒されている。
しかもひどく険しい表情の担任に。
理由はわからない。
ちゃんと学校にも来たし、たるい授業にも出席した。咎められることなど何一つない。
それなのに眼前の男は険しく、だがどこか傷ついたような表情で高杉のことを見下ろしていた。



―――俺が何したって言うんだ



訳もわからず暴れてみるものの、強く押し付けられた腕から逃れることが出来ない。
しかも、暴れれば暴れるだけ手首を掴む手に力が篭っているように感じる。



「ぎんぱち…っ、痛ぇ」



話しかけるついでに主張してみたのだが、無視を決め込むつもりなのか全く反応しない。
いつまでも複雑な、だがわかりやすい視線を注がれ続ける。
いい加減嫌になる。
なんて情けない表情をしてるのか、と怒鳴り付けてやりたいが今の状況下では下手に相手を刺激するのはまずい。何をされるか考えただけでも痛々しい。
ぽたっ、と冷たい何かが顔に落ちてきた。ぽたぽたぽたと止めどなく降り注ぐ。まるで雨のように。



―――なんで、泣いてんだよ



「うる、せ…お前の所為…っだろうか!!」



どうやら口に出していたようで、嗚咽混じりの返事が降ってきた。
先程以上に感情の読みやすくなった瞳から落ちる雫は悔しさからなのだろうか。
高杉は銀八の感情の吐露に嬉しそうに微笑んだ。



―――嫉妬にまみれた瞳が心地いい



きっと見たのだ、他の男と話しているところを。銀八に黙ってこそこそしていたところを。
浮気などではない。
友人関係を築くためだけの行為。
たったそれだけのことで彼はこんなにも傷ついてくれている。悔しがってくれている。
頭の中が高杉でいっぱいになっている。

堪らない

嬉しい

好き

大好き



―――愛してる



眼前の男が愛おしくて堪らない。
押さえ付けてきた感情が津波のように押し寄せる。

スキ、スキダヨ

スキ、すき、好き、好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き大好き大好き大好き大好き愛してる愛してる愛してる愛してる愛してるその嫉妬心も独占欲も貴方を創る総てが好き大好き愛してるその感情を踏みにじりたい壊したい、コワシテシマイタイ



―――愛してるから



目を細め、口元を歪めて囁く。
その表情が絶望に歪む様を見てみたい。



「…もしかして、アレを見たの…?」



びくっと銀八の肩が揺れる。

気になってしょうがない話題だろ??
ほら早く、食いついてこいよ。
わざとらしく餌は吊した。
後は貴方が食いつくのを待つだけ――



「見たんだね、俺と土方が話しているところ」
「…好き、なのかよ…アイツのこと」
「好きだけど??」



間髪入れずに答えた言葉に銀八の瞳がゆっくり見開かれていく。
不安が嫉妬に変わり、今絶望へと変化しようとしている。

愛おしい
その瞳が欲しくて堪らなかった



―――俺だけを映す、深紅の瞳



手首が解放され、銀八の手が首にかけられる。
今、絶望が殺意へと成長を遂げた。



「ホントにアイツが好き?」
「うん、好き(友達としてだけど)」
「俺よりも??」
「もちろん(だって貴方は俺が愛したたった一人の人)」



ぐっ、と銀八の手に力が篭る。
息がつまり、呼吸が苦しくなる。

ギチギチギチ

銀八の愛が高杉の首を締め付ける。
それを清々しい表情で見つめていると、ふと銀八の手が緩んだ。



「ケホッ…殺さねーの?」
「………っ、殺せるわけねぇだろッ!!」



怒鳴るように叫んだ後、殺せるわけねぇじゃん…、と静かに泣きながら呟いた。
愛憎はどうやら愛の方が勝ったらしい。
銀八は愛故に殺せる人間ではなかったようだ。



「弱虫」
「え…?」
「愛してるよ、銀八」



ちゅっ、とリップ音を響かせ、銀八の唇に自分の唇を重ねる。
顔を離せば追い掛けるように迫る銀八の顔があり、再び唇が重なった。
後頭部に手が回り、離れられないように固定される。



「ん…ふっ…ンぁ」



苦しくなって口を開けばすかさず銀八の舌が咥内に侵入し、好き勝手に犯して回る。
歯をなぞられ、舌が奥へ奥へと進行してくる。
その深く交わる感覚にクラクラした。



「高杉…っ」
「あっ…ぎん、ぱちィ…」
「いいか…?」
「断ってもヤるくせに」



そう笑っていえば困ったような表情で笑った銀八の顔がゆっくり近づき、深い深い口づけを交わした。



―――このキスくらいグチャグチャに犯してくれたらいいのに



がっつくようなキスに酔いしれながらうっとりと微笑んだ。



【歪んだ愛の物語】



貴方を壊すのはこの俺。



終わり



2010/03/20 潤

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