銀魂小説
□幸か不幸か
2ページ/5ページ
どういうことなのだろう?
未だに総悟の言った意味がわからない俺は、しぶしぶ来た『タカスギクリニック』の待合室にいた。
俺は総悟に何故『感謝』するのだろう。
別にいたって普通の病院だと思う。
待合室は綺麗だし、それなりに広いし、患者さんもそれなりに来ている。何処にでもありそうな町病院だ。
《俺が行ってる病院はいいところですぜぇ?》
んー・・・、どういうことなのだろう・・・・・。
「土方さーん。診察室にどうぞぉ〜」
俺はまったくやる気のない看護士に呼ばれ、診察室に入る。
診察室の中は保健室に無いような薬品がいっぱい棚に並んでいた。
そして、いた。
医者が。
その医者は一度見たら忘れないような、濡れたのような、どこまでも続く漆黒の闇のような髪の色をしていた。
―――――キレイ・・・・・・・
俺は今までどんなにきれいなものでも素直に『キレイ』などとは思ったことが無かった。だが、この医者の真っ黒な髪だけは素直にきれいだと思えた。
医者の髪に見惚れていると診察書を見ていた医者がこちらに振り返った。
「はじめまして。俺はここの院長の高杉だ。よろしく」
医者――――高杉がにっこりと微笑んだ。
その人は本当に俺と同じ人種なのだろうかと疑いたくなるくらい綺麗な人だった。
髪の色は紫がかった艶のある黒。
眼の色は見ていると吸い込まれそうになるような深みのある緑。
肌の色は白く、例えるなら『人形』のようで。
俺より年上のくせに俺より小柄で。
ケガでもしているのだろうか、左眼は眼帯で覆われている。
そんな一風変わった医者はそこらへんにいる女よりもキレイだった。
見とれていると高杉と視線が合った。
すると、高杉は俺の顔を見るなり、驚いたような顔をした。
しかしそれも一瞬のことで、一人納得したように「そっか、だから・・・」などと、呟いていた。
「・・・ケガ、したらしいなぁ。何処をケガしたんだぁ?」
何故か、語尾までわかるように延ばしてしゃべる。
―――――さっきの事といい、変わってんな・・・・・
「実は剣道部の練習中、後輩に竹刀で腕をやられました」
「へぇ〜、剣道部なんだぁ。実はさぁ、俺も剣道部だったんだぜぇ?」
しかも、銀魂高校の!と、高杉は嬉しそうに言った。
そんな言いながらでも高杉は俺の腕を見せるように促した。
―――――さすが医者・・・・・・
「あ!もしかしてさぁ、その腕、沖田にやられたんじゃねぇ?」
俺は内心ドキッとした。
「そう・・・・ですけど・・・・・・・なんで分かったんですか・・・・?」
高杉はにっこり笑って言った。
「癖だよ。沖田の癖がしっかりこの傷に付いてる」
そういいながら高杉は受付に居た看護士とは別のマタコという看護士に湿布と包帯を持ってくるよう指示していた。
「あいつ、強いだろぉ?」
「え?…あ、はい。強いです。一応うちのエースなんで」
「そっかぁ。強いか…フフ、手合わせしてもらおうかなぁ」
高杉は本当にうれしそうに笑った。
自分の息子が褒められたのを嬉しそうに聞いている父親のように笑っていた。