銀魂小説
□幸か不幸か
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「うっわぁ〜…、痛たそぉ〜」
突然の声に俺はびくりと、声のした方へと顔を向けた。
俺はその人物の名を呼ぼうとした。
「ぎんぱ…」
「銀八」
だが、それは高杉の声で遮られた。
「土方、これ沖田にやられただろ?あいつ容赦ないからなぁ〜」
「なっ、なんであんたがここにッ?!」
銀八はにっこりと笑っていった。
「俺ね、高杉の恋人なの☆」
「だから、土方君。高杉のこと好きになんなぃブゴシッ!!」
一瞬だった。一瞬で銀八の鳩尾に高杉の右ストレートが後頭部には看護士の左膝が直撃していた。
「「俺は(晋助様は)お前の恋人じゃねぇ!!」」
二人は見事なまでにタイミングの合った動きをして銀八をノックアウトにした。
―――――すごッ!何あの連携プレイ!?
銀八なんて最初から居なかったかのように二人は話をし始めた。
「先生、湿布と包帯っス」
「あぁ、ありがとう。…さて、土方君。湿布を張ろうか」
本当に何事も無かったかのように俺に笑い掛けてくる高杉。俺はただ高杉に従うことしか出来なかった。
だが、ゴキブリ並みの生命力+しぶとさを持っている銀八は尚も高杉に言い寄る。
「ちょっ、高杉・・・。ぃ・・・いまのは、ひどいンじゃない・・・?」
「土方君、念のためしばらく練習は軽くすること!わかったな?」
「・・・あ、はい。わかりました」
「たかs・・・」
「それから、風呂に入る時は湿布を張ったまま入れよ」
「晋ちゃ・・・」
「そのとき湿布が濡れる可能性があるから、ビニール袋か何かで濡れないようにして下さい」
「・・・はい」
哀れだ。
俺は銀八のことがこれ程哀れだと思ったことがない。オール無視じゃないか。
「・・・あの、先生・・・」
「ん、どうした?分からないことがあったか?」
高杉は営業スマイルとでもいうのだろうか、その位爽やかな笑みを見せた。
「え〜とぉ・・・、その・・・銀八のことは完全無視ですか・・・?」
「え?銀八?誰それ、知り合い?」
わざと・・・なのだろうか。本当に知らないといったような顔をしているよ、この人・・・。当の銀八はというと診察室の隅のほうで体育座りをしていじけていた。
「それじゃあ、今日は湿布と塗り薬出しとくから。一週間後、またここに来てくれ」
「あ、はい。分かりました」
俺はちらりと銀八を見た。
いまだに隅のほうにいる。
俺が銀八のほうを気にしていると、高杉が小さくため息をついた。