銀魂小説

□幸か不幸か
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俺は気が付くと学校の剣道場に戻ってきていた。
仕方なく、病院から戻ったことを近藤さんに報告しようと中へと入る。

「・・・近藤さん」
「おぉ!トシ!大丈夫だったか?」

いつも通り近藤さんが豪快な笑顔で出迎えてくれた。
チラつくのは黒い制服を着た30前後の男。
ともに戦った同士、武装警察真選組局長、近藤勲。
でも、今目の前に居るのは多少なりとも老けた顔をしているが、正真正銘の高校生の近藤勲だ。
俺はただ、愕然と近藤さんの顔を見ることしか出来ない。

「おや?土方さん、もう戻ってきたんですかぃ?」

その声を聞き、脳裏に浮かぶのはやはり黒い制服を着た10代後半の青年。
顔立ちはそう変わりないが、何時もは竹刀を持っている手にバズーカを携えている。武装警察真選組一番隊隊長、沖田総悟。
混乱しすぎて、頭痛がしてくる。
何なんだこれは、一体何がどうなっている・・・。この記憶は一体何なんだ・・・?

「で、どうでしたかぃ?高杉先生は?」

総悟のにやにやとした顔が視界いっぱいに入る。

「え・・・?」
「美人だったでしょ?しかも、土方さん好みのきつめ美人だったし」

にやにやと総悟が笑う。
俺はそうだな、と軽く流しながら返事をする。

「すまねぇ、今日は帰るよ」
「どうした、トシ?具合でも悪いのか?」
「ちょっとな。でも、心配するほどでもねぇよ」

じゃあ、と近藤さんの返事を聞く前に俺は剣道場を出た。
でも、気付かなかったんだ。
話したことも無い俺の好みを総悟が知っていたことに。
その総悟が俺の後姿を遠い昔の俺と重ね合わせてみていたことに―――



その日の夜から、俺はおかしな夢を見るようになった。
初めはぼんやりと霞みかかった夢だったのに次第に階を増すごとにクリアになってきた。
それはもう、自分の体験したことを思い出しているように。


そして俺はようやく気付いた。
これが俺の前世の記憶だということに。


「くそっ、俺はまたあの銀髪に大切な人を奪われるのかよ・・・!」


『・・・まったく、アンタがそんなんだから俺はあの『夜叉』のことを忘れられないんだ』


「ホントだよ、変わってねぇよ、俺は。昔も今も・・・」

唇を噛み締める。
視界にちらつく腕の包帯。
彼が何時も左目に巻いていた白い包帯。
俺は決意する。
次、この包帯を取替えに行く一週間後、俺はあの人に思いを伝えよう。
気持ち悪がられてもいい。自分の思いを、前世から持っていた想いをあの人に―――



『今度こそ、手に入れてやる』










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