銀魂小説

□ホワイトデーには純粋な愛を君に
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ブツブツと呟いているとそろり、と晋助が動く。
俺はそれを(目敏く)見つけ、壁に押し付けた。
黒猫が息をのんだのが分かった。


「晋助・・・俺もね、君と同じ。返さなきゃって、思ってるの。大好きな晋助に、俺の愛をあげたいの」
「ぎ、ぱち・・・」
「金色の雌豹に渡したくないの。分かってくれる?」
「・・・でもっ」
「今日一日でいい・・・俺とずっと一緒に居てよ・・・お願い」


どうしちゃったんだろ。
晋助と居るとどうも俺は下手に出てしまう。
嫌われるのが怖いのか。
それとも相手にされなくなるのが怖いのか。
きっとどっちもだと思うけど、それだけ俺は君の事を愛しているんだ。

小さな肩に顔を埋め、唸るように声を出す。
何時もみたいにスラスラと言葉が出ない。
これが、正真正銘の俺の気持ちなんだ。


「大好きなんだ・・・好きすぎて嫉妬しちまう・・・!」


ぎゅっ、と壁に押し付けたまま抱き締める。
晋助が苦しそうに声を出したが、そんなの気にしていられなくて、俺は心の中で謝る。


『ゴメン、愛してる』


愛しているから、今だけは許してほしい。
人一倍独占欲の強い俺は、自分の手の中にあるものを守るのに必死になる。
その所為で、そのまま握り潰してしまうことも度々あった。
でも、この子だけは。
この子だけは優しく、丁寧に扱ってあげなくては。
一生ものの恋を、自分の手で駄目にしたくないのだ。

背中に暖かい体温が伝わる。
オズオズと背中に腕を回している彼の顔は真っ赤で、俺は倒れそうになった。


「しんすけ・・・っ」
「・・・俺、分かんなかった・・・どうしてお前に手作りチョコをやったのか。でも、今ならわかる。決してチロルをやって喜んでたお前に同情したんじゃなくて、大好きな人が自分の気持ちも入っていないものを貰って喜んでいるのが嫌だったんだ・・・」


ゴメンなさい、と腕の中でか細く呟いた晋助を俺は精一杯抱き締める。
絶対に潰さない、優しさをもって。


「晋助・・・愛してる」
「ん・・・俺も・・・」


耳元で囁いた言葉に、愛しい彼がハニカミながら呟く。
それが可愛くて、俺はガラにもなく顔を緩める。
アンニュイ顔ではなく、愛しむような顔で。


「今日一日、俺にくれる?」
「仕方ねぇからやってやらぁ」


返事は何時もの君で、ほっとする。

あのバレンタインから今日までずっと考えていた。
どうすれば彼が喜んでくれるのか。
どうすれば彼に俺の思いが伝わるのか。
それを必死に考えて考えて頭を抱えていた。
結局結論は出なかったけど、でも思いはこうやって伝わって。

だから今から俺は、君を喜ばせれるような楽しいデートをプレゼントするよ。
最後には俺の愛情の篭ったキス。
君のくれた甘くてとろけるチョコのように、君を溶かしてあげるから。





終わり
(後書き)



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