リクエスト

□雨のち君のち雪
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「早く来い!」
「いや…でもコレ…」
「貸してやる」
「はぁ?お前傘持ってんのかよ?」
「持ってねぇ。入れてやるから早く傘差せ」

濡れる、寒い、と言いながら腕を摩っている高杉を見てあぁ、傘ないのバレてたんだ、と心の中で思う。
土方は小さく笑い、高杉の元へと歩み寄る。
傘を開き、腕を伸ばして高杉の上に傘をかざす。

「仰せのままに、お姫様」

ウインク付きで言ってやれば高杉の顔が真っ赤に染まる。

「…キモい」
「そのキモい奴の言葉聞いて顔真っ赤にさせてんのは何処のどいつだ」
「うるせぇ!これは寒さの所為だ!!」
「かーわいー」
「黙れッ!〜〜〜っ、帰る!」
「待てって。濡れたら更に寒くなるぞ」
「う〜〜〜…早く来いよ!」
「はいはい」

雨の中、二人は並んで歩き出した。
無言で歩く二人だが肩をぴったりと寄せ合わせている。
この微妙な距離が嫌で、土方は小さく呟いた。

「……まれよ」
「あ?なんか言ったか?」
「だから」

ひらり、と目の前を白い何かが横切る。
二人は傘を退けて空を見上げた。
そして、小さく歓喜の声を上げた。

「うわぁ」
「いつの間に…」

雨はいつの間にか雪に変わり、ふわりふわりと地面を白くしてゆく。
高杉がちらり、と土方の顔を見る。

「土方」
「何だ?」
「さっき言いかけてたこと…」
「あぁ…えーと…家来ないか?」
「え…?」
「寒いし、お前の家まだ遠いだろ」
「ん…でも」
「その…俺一人暮しだから…寒いの嫌だなぁと…」

照れ臭そうに頬を掻き、そっぽを向いている土方を見て、高杉はくすりと笑った。

「…俺も、一人暮しなんだ。だから…」

「泊まっても、いいか?」

高杉が上目遣いで見上げてくる。それが可愛くて、土方はそこが道の真ん中だということを忘れ、抱き着いた。

「ひっ、土方っ?」
「泊まれっ!何時までも泊まっててくれていいからな!」
「ちょっ、苦しいっ」
「あっ、すまねぇ」

そっと離れる。だが、離れたのもつかの間、今度は高杉が土方の腕の中に入って来た。
それに土方はドキリ、として固まる。

「おっ、おいっ」
「…寒い」
「あ?」
「早くお前の家行こうぜ」

土方の腕の中で高杉が呟き、離れる。
そして二人は雪の降る空の元、手を繋いで暖かい家へと向かった。



このままずっと君の隣に居られるのなら雨だろうが雪だろうが構わない。

でも、綺麗な青空の下、日に照らされる君の隣にいたいと思うのも事実。
だから俺は何時でも君の隣に入れる男になりたい。

―――傍に居させてくれるか、高杉

―――何言ってんだよ、バーカ



『何時までもそばに居やがれ』





〜後日談〜
それから数ヵ月後、二人は一緒に住むことにしたらしいです。




おわり
(次→あとがき)



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