銀魂小説
□出会い
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「…そういうわけだから」
「え…あ、あぁ。頑張ってねー…」
呆気にとられながら手を振り、その小さな背中が見えなくなるまで見つめ続けていた。
「(何だ…何な顔も出来るのか…俺は出来なかったのに)」
彼の背中が見えなくなるとふと、そんなことを思った。
俺は松陽先生に出会うまであんな顔、一度たりともしたことがなかった。教えてもらわなければ出来なかった。
「(つまり、アイツには導いてくれる人がちゃんといる、って事か)」
先程の高杉の顔を思い出しながら目を細める。そして一つの答えにたどり着く。
「(アレ?てことは、俺用無し?)」
漸く出会えた心を閉ざした少年は自分ではなく他の人物によって心を開こうとしていた。
いらない、と突っぱねられた気分だった。
「(それなら、)」
俺は口元に笑みを浮かべ、彼の消えていった道を見つめる。
「(彼が一人の人間に心を許すのなら、)」
あの深い緑色の隻眼が脳裏にちらつく。
真っすぐ射抜くようなあの瞳。
「(俺がアイツの世界を広げてやる)」
あの瞳に世界が映るとどれほど美しくなるのだろうか。
俺は夕暮れの赤の中、ニヤつく口元を隠して肩を揺らした。
終わり
2009/04/25 潤