銀魂小説

□おめでとうの一言
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「あ、副長さん」
「あー多串君だぁ」
「あー…?」

副長、という言葉に反応し、俺はその声のした方へと顔を向ける。
多串とか聞こえたが、この際無視することに決めた。
そういう風に俺を呼ぶ奴なんて、世界に一人しかいない。

「…高杉…に、万事屋…」
「おーおー、なぁにその嫌そうな顔は」
「実際嫌なんだよ、テメェらに会うのは。二人一緒の時は特にな」
「もぉやだぁ!お似合いのカップルだなんてぇ!!」
「誰もんなこと言ってねぇだろ、腐れ天パぁぁぁあ!!」

突然目の前に現れたテロリストと万事屋に俺は顔を引きつらせた。
このお騒がせカップルに関わると碌な事が起きない。
普通なら犯罪者を野放しにしておくわけにはいかないのだが、万事屋といる限りテロを起こすようなことはしない。
それに俺は非番中。そこまで仕事熱心ではない。
まぁ、仕事中ならば即刻逮捕するところではあるが。

「で?何の用だよ?」
「ん〜?散歩。家の中ばっかりじゃ、つまんないでしょ?」
「って、俺が言ったんだけどな」
「だってぇ〜!俺は晋ちゃんと入れれば例えそれが地獄だろうと構わないんだもん!」
「もんとか言うな、キモイ」
「晋ちゃんはもんとか言ったら可愛いよね」
「…っ、死ね!」

目の前で繰り広げられる痴話喧嘩と言う名の惚気に俺はだから嫌だったんだ、と思いながらため息をついた。
それに気づいたらしい高杉が声を出す。

「まぁ、散歩っていうのは口実だ」
「あ?」
「おい、銀時」
「はいよー」

高杉から声をかけられ、どこから出したのか銀時の手にはいつの間にかビニール袋が握られていた。
それを高杉が受け取り中身を取り出すとそれをそのまま俺の目の前に差し出した。

「…え?」
「やるよ、これ」
「一応ちゃんと選んできたんだぜ?まぁ、違いとかわかんないけど」
「え、あ、さんきゅ…」

ぽん、と手の上にマヨネーズ(事務用)を置かれる。
マヨには丁寧に赤いリボンが巻かれていた。

てか、何で?

マヨと銀時達の顔とを交互に見る。
状況がさっぱり把握できない。
それを知ってか知らずか、高杉が袋からもう一つ取り出す。

「あとこれもやるよ。銘酒『鬼嫁』だ」
「あ、あぁ」
「ホントは一緒に飲みたかったんだが…」
「ダメだよ?!何、堂々と浮気宣言?!銀さん嫉妬で多串君殺しちゃうよ?!」
「生々しいこと言ってんじゃねぇよ!!」
「テメェにゃ絶対渡さねぇからな!!」
「いらねぇよ!早く持って帰れ!!」

警戒の目を向けたまま、銀時が高杉のことを抱きしめている。
どうでもいいが、暑苦しい。
俺は面倒臭くなり、ベンチから立ち上がる。

「どこ行くんだ?」
「あ?帰るんだよ、屯所に」
「何でだ?休みなんだろ、今日」
「何で知ってんだよ…」
「何でって、着流し着てるから」
「あぁ…。ここに居たって暇なだけだからな。屯所に帰れば仕事くらいいくらでもあるからな」
「…ふぅん」

声をかけてきた高杉が少し考え込む。
それを疑問に思いながらも背伸びをし、貰ったマヨと酒を持って歩き出そうとした。
するとつい、と着流しの袖を掴まれる。

「(デジャヴ…)…なんだ?」
「…ぁ、えーと…」
「ん?何だよ?」
「そー言えば、何かマヨの特売やってたような…」
「何?!どこだ?!どこでやってた!!」
「ん〜、どこだったけぇ?確か…ターミナルの近くにあるスーパーだったような」
「よっしゃぁぁぁあ!!待ってろマヨぉぉぉ!!」
「違ったらその周辺のスーパー探してみろぉー」

俺は全力疾走してターミナル周辺へと向かう。
その後姿をほっとした目で二人が見ていたことを俺は知らなかった。



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