銀魂小説

□気恥ずかしさは拭い切れないけど
2ページ/2ページ


投げ返された手錠を見て、俺はにやりと笑い、それを更に旦那に投げ渡す。
旦那は赤い目を点にして首を傾げて俺を見た。

「上げますよ、旦那」
「は?なんで?」
「二人の愛の育みに拘束具はいかがですかィ?」
「止めろよ、銀時。俺ぁ、そんなの付けられたって興奮しねぇ」
「・・・・・・」
「銀時?」

真剣な顔で手錠と高杉を交互に見た旦那はニヤリと笑ってそれを懐にしまい込んだ。
それに高杉が非難の声を上げる。

「ふざけんなよ銀時!俺ぁ、ぜってぇやらねぇからな!」
「抵抗していいからね。そっちの方が俄然燃えるッ」
「てめっ、このドSが!!」

グルグルと犬のように威嚇する高杉といやらしい笑みを浮かべている旦那の今夜の様子を思い浮かべ、俺は笑った。
やっぱりこの二人のやりとりは面白い。
俺はそろそろ場所を移動しようと高杉から隊服を受け取り、別れを告げた。

「じゃあ、俺ぁ土方さんに見つかるのが面倒なんでこの辺でお暇しまさぁ」
「まぁたサボりかよ」
「これが俺の生き甲斐なんでィ」
「お前大物になるな」
「未来の副長様でぃ」

俺は口の端を器用に上げて笑い、二人に背を向けた。
すると旦那が『あ』と声を出した。

「待って、沖田君」
「・・・?」

ゴソゴソと懐を漁る旦那を見て、俺は首を傾げた。
何かを探しているようなのだが、一体何なのか見当も付かない。

「んー・・・と、あ、あったあった」
「・・・ん?何ですかィそれ」
「手錠のお礼」
「お礼って・・・別に俺は」
「気にすんなって。子供が遠慮なんてするんじゃありません!」

無理矢理『お礼』を渡され、俺は困惑した。
綺麗にラッピングされたそれは明らかにプレゼント用にあしらわれた物だ。
それを俺に渡すなんて、旦那は一体何を考えているのだろうか。
俺は疑問を込めて旦那と高杉を見た。
すると旦那の手が俺の頭に伸び、ぽんっ、と手を置かれ、撫でられた。
俺は目を見開き驚く。
何故か二人ともとても優しげな笑みを浮かべていた。

「な、に・・・」

「「おめでと」」

「え―――?」

俺は二人の言葉の意味を理解することが出来ず、ぽかんと二人の顔を見つめた。
二人は尚も笑みを浮かべ続けていて、俺の疑問は増える一方だ。
辛うじて搾り出すことが出来た言葉は何ともそっけないものだった。

「あ、そう・・・」
「あ、そうって何だよ?もうちょっと他の言葉とかないわけ?」
「いや・・・意味がわからないもんで・・・」
「あらら〜?自分の誕生日も忘れちゃったの?」
「たん、じょうび・・・あ」
「思い出したみてぇだなぁ」

思い出したくないあまりに俺はどうやら誕生日というものを記憶の奥底に封じ込めていたようだ。
俺は恥ずかしくなり俯く。

なんと言うか・・・面と向かって“おめでとう”と言われるとこっちが恥ずかしくなる。

昔は大人に近づけるのが嬉しくて、誕生日が来るのを心待ちにしていた。
江戸に来てからは誕生日を気にしたことなんてなかった。
気にしている暇なんてなかった。
でも姉上が死んでからは誕生日を迎えることが恐ろしくなったてしまった。
あの人がいないということを如実に実感してしまうから。

でも、こうやって本当に誕生日を祝ってくれる人が居ると思うと、別に恐れる必要なんてないのではないかと思えてくる。
そう気づかされた俺はハニカムような笑みを浮かべていた。


二人の元から離れ、屯所へと帰っていた俺は旦那から貰ったプレゼントを開けてみた。
中にはチェーンアクセサリと連なった紙が入っていた。
開けば手作り感溢れる『土方抹殺計画お手伝い券』と書かれており、米印のところに『銀さんが君にお手伝いにやってくるよ☆』と可愛らしく記されていた。

「さすが旦那。あの人らしいや。・・・ってことはこっちのアクセは高杉さんからてぇことですかねィ」

十字にチェーンが巻きついたようなデザインのアクセサリを俺は隊服のズボンに早速つける。
しっくり合うそれに嬉しくなって俺は一層笑みを深くした。



屯所に入った瞬間、パーンと乾いた音が響き目の前に紙吹雪が舞った。
俺は目をぱちくりさせて目の前の男を見た。
釣りあがった目をこちらに向けて笑みを浮かべる土方さんに俺は気持ち悪いものを見るような目で見つめた。

「何やってるんですかィアンタ」
「何って、誕生日だろ。つか早く帰ってこいっつったろうが」
「あ?いつですかィ?俺ぁ、知りやせんぜ?」
「お前が爽やかに去っていった時だよ!聞いてなかったのかァ!?」
「あぁ・・・あの時何か言ってたのはそれだったんですかィ。しょうもない話だと思って聞いてやせんでした」
「総悟ォォォ!!」

玄関先で喧嘩する俺と土方さんの騒ぎを聞いて慌ててやってきた近藤さんに連れられて俺は道場へと案内された。
そこには隊士全員がプレゼント片手に笑顔で俺を迎えてくれた。

祝ってくれる人が居る。
それだけで幸せな気分になれる。
でも恥ずかしいから俺は笑顔を浮かべるだけでお礼なんて言ってやらない。


終わり


沖田誕生日おめでとう!
間に合った!
最後の方急いで書いたので相当グタグタです
無理矢理です
まぁ気にしない方向でお願いしますw


2009/07/08 潤
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ