銀魂小説

□酒の誘惑 取り返しのつかない真実?
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にぃ、っと笑った銀時は高杉の手を引き、トイレから出た。
そして当然のようにこちらを振り向いた土方は露骨に嫌な顔をして銀時を見た。



「・・・万事屋」
「おや。旦那も飲みに?」
「あぁ。でも帰るとこだ。連れが潰れちまってな」



銀時は自分の身体で高杉を隠しつつ、入り口へと向かう。
それをじっと見つめる土方は何かを考えるような素振りを見せ、ややあって声をかけた。



「何で着物なんか頭から被ってんだ?」
「いやぁ、酔い覚ます為に顔洗わせてたらコイツふら付いて頭から水被っちまってな。寒いだろうから俺の着物貸してやってんの」



土方の尤もな意見に銀時はスラスラと口からでまかせを紡ぎだす。流石、口から生まれたような男と言われただけのことはある。この手のやり取りで銀時を黙らすことなど出来ない。
土方は納得出来ず銀時と高杉をじっと見ていたが、店主が旨いタイミングで二人が頼んだおつまみを出したことで土方の気が逸れた。
それを見逃さず、銀時と高杉は勢いよく駆け出した。が、しかし、二人は店から出ることが出来なかった。



「走ってどうしたんですかぃ、旦那?」
「そ、総一郎君・・・」
「総悟でさぁ。よかったら旦那達も一緒に飲みませんかぃ?」
「いやいや、もう俺達とっくにピーク超えてるから。吐くまで飲んだから俺達」
「なんでぃ。ならまだ入るでしょう?吐いた分飲んでいきなせぃ」



腕を掴まれズルズルと引き摺られた銀時と高杉は土方と沖田の間に座らされた。どうみてもコレは銀時たちを帰さない為のポジションである。
正面から沖田、銀時、高杉、土方の順に並んだ4人はグラスを持ち、飲み始めた。銀時に関しては先ほど飲んでいた酒が効いているのかチビチビと飲んでいる。
だが、同じように飲んでいた高杉は普通に飲み始め、隣に居た銀時は目を見張った。小声で高杉に声をかける。



「(高杉!お前そんなに飲んで大丈夫なのかよ!?)」
「あー?平気に決まってんだろぉ?ヒクッ」
「おーい!!一口目にしてすでに酔っ払いのオッサンみたくなってんじゃねぇか!!」
「アンタいい飲みっぷりですねぃ。こっちの酒もどうですかぃ?」
「おーぅ、注げぇ」



騒ぐ銀時の目の前で高杉のグラスに沖田が酒を注ぐ。
その並々に注がれた酒を見て銀時は口を押さえた。流石に吐くまで飲んだのに更に上乗せして飲めるはずがない。
異常なまでに酒を飲みだした高杉に対し、不安を抱きつつ銀時は店主にイチゴ牛乳を頼んだ。
当然のように出てきたイチゴ牛乳を見て、土方は目を見開く。



「何でイチゴ牛乳が出てくんだよ」
「俺がここの常連だからですぅ。・・・はぁ、やっぱ酔いを醒ますにはイチゴ牛乳が一番だなぁ」



わざとらしい声を出しながら銀時は隣で飲む高杉のことが気が気でなかった。
未だに着物を被らせたままだがいつ彼らに高杉の正体がバレるか分からないのだ。
チラチラと高杉を見つつ、銀時はイチゴ牛乳を飲んでいた。



「(どうすっかなぁ・・・高杉の奴は完全に酔っちまってて状況判断が出来ねぇし、ヘッドフォン野郎に連れて帰ってもらうにも奴はトイレから出れない・・・くそっ、どうすっかなぁ・・・)」



ちびちびとイチゴ牛乳を飲みながら今後について考える。
逃がすと決めた以上このまま高杉を置いて帰るわけにもいかない。
時機を見て逃げ出そう、と高杉に耳打ちしようと顔を近づけようとした瞬間、ガタッと音が鳴った。
驚いてそちらを見れば高杉が顔を真っ赤にして叫んだ。



「大将!二階貸せ!テメェら上で宴会だァ!!」
「おぉー!!」
「え・・・ちょっ」



バタバタと酒瓶を持って二階へ駆け上っていく高杉と沖田の後姿を呆然と銀時は見つめた。
完全に酔っ払ってしまった高杉は本来の目的を忘れ、敵と酒盛りを開こうとしている。
土方もその後ろへいそいそとついて行き、一人残された銀時はもういっそ帰ってしまおうか、と旧友を見捨てる計画を立て始めてしまった。



「もう無理。あの晋ちゃんを止められる自信がないよ・・・大将、俺帰っていい?もう帰りたい。定春にもふもふしたい・・・」
「それは許さんぞ、白夜叉。晋助をおめおめ敵の手に渡してもらっては困る」



トイレから出てきた万斉が出入り口へと向かおうとしてる銀時の肩を掴んで詰め寄る。
銀時は肩を掴む万斉をキッと睨み、ヒステリックな声を上げた。
所詮銀時も酔っ払いだった。



「テメ・・・ッ、だったらお前が行けッ!俺関係ないじゃん!帰りたいッ帰りたいッ!定春ゥ!」
「ちょっ・・・白夜叉?何でござるかコレ。物凄くめんどくさい絡み方をしないでもらいたいでござるよッ」
「さだはるぅーッ!!」



感情の意図が切れたかのように泣き出す銀時に万斉はげんなりと顔を顰める。
酔っ払いの話ほど的を射ぬ話題はない。
しばし考えた万斉はいい案を思いついたのか、銀時の肩を叩く。



「白夜叉。定春は居らぬが、黒い猫は二階に居るでござる。その猫をもふもふしてくるといい」
「猫ぉ?」
「抱き心地は最高でござる」
「・・・・・・ちょっと行ってくる」
「健闘を祈るでござるよ」



口元に笑みを携えて階段を上がっていく銀時の背中を見送りながら、万斉は小さくため息をついた。



「晋助が真選組に捕まるよりマシでござる」



万斉にとっては苦肉の策といっても過言ではない作戦だった。
しかし、勝算がある訳ではないのだが、高杉が一人敵の中に居るよりはマシだろうと考えた。
途中で酔いの覚めた銀時が何とかして高杉を連れ出してくれれば万々歳である。
万斉ははぁ〜、と盛大にため息をつくとカウンター席に着いて酒を頼んだ。








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