俺+弟=1?(連載)

□0.ご賞味あれ
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似てない双子。
だけど、絆だけはどんな双子にだって負けるつもりはない。


第0話
【ご賞味あれ】



その双子はこれっぽっちも似ておらず、しかし、どんな双子よりも一緒にいた。
ほんの少し早く生まれてきた兄の銀時。
ほんの少し遅く生まれてきた弟の晋助。
双子はごく普通の家に生まれ、ごく普通に生きていた。
父も母も優しく、幸せな生活を送った。

そして彼らが高校に入学してしばらくしてからのこと―――

「――は?海外転勤?」
「あぁ。父さんの病院の系列なんだが、人手が足りないらしい」
「いや、だからって」
「無理に、とは言わん。お前たちももう高校生だ。だが、出来れば一緒に来てほしい」
「でも・・・」

大きな病院の医師をしている双子の父の転勤が決まり、二人は戸惑う。
優しさからここに残ることを許す父だが、内心では双子も一緒に、そう思っていた。

「ママもパパについていくから・・・だってほら、パパっておっちょこちょいでしょ?心配なのよ」
「ちょっ、母さん!子供たちの前でなんてことを・・・!」
「ごめん父さん。おっちょこちょいなの知ってるから、俺たち」
「うん。隠す必要ねぇよ」
「そんなに父さんおっちょこちょいかなぁ?!」

銀時とそっくりの父は恥ずかしさのあまり両の手で顔を覆う。
隣の母が『大丈夫よ!パパかっこいいもん!』などと慰めている。
双子はそんな両親を見た後、顔を合わせる。
気持ち的には残りたいのだが、どちらか一方が行くというのなら海外だろうがどこだろうが行くつもりだった。
だが、目を合わせると自然とどう思っているのかわかり、どちらからともなく小さく笑う。
双子は真剣な顔をして両親と向き合う。

「父さん、母さん。俺たちここに残るよ」
「海外でのんびり暮らすのもいいけど、ここの生活も結構気に入ってんだよね、俺たち」
「銀時・・・晋助・・・」
「やっぱり・・・そういうと思ってたわ」

晋助とそっくりの笑みを浮かべ、母は当然とばかりに口を開いた。
父も薄々気づいていたらしく、しかたないな、とため息をついて笑う。

「貴方たちなら大丈夫よ。銀ちゃんは料理得意だし、晋ちゃんはしっかりしてるもの」
「そうだな」
「それに・・・」

一旦言葉を切り、母は微笑むと双子のことを力いっぱい抱きしめた。

「なんたって私たちの子供だもの!二人でやっていけるわ」

『絆は誰よりも強いから』と、母はギュウギュウと抱きしめた。
それを見ていた父も『心配はしてない!』と双子の頭を乱雑に撫で回す。
突然のことに驚きながらも何だか嬉しくなり、口元を緩めて笑う。

似ることのなかった双子は笑顔で両親を見送り、新たな生活をスタートさせた。
これから始まる話はそんな双子の物語。

ラブであり、コメディであり、青春ものであり、ハートフルなアットホームであり、しかし時々シリアスな騒がしくも楽しい、そんな物語の始まり始まり―――







2009/06/05 潤
 

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