俺+弟=1?(連載)

□2.ズルイ
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双子は今日も元気です。


第2話
【ズルイ】



「あー・・・明日学校かぁ・・・」

日曜の夜。
国民的アニメ番組を見ながら銀時は一人ごちる。
どうにもこのアニメのエンディングを見ていると日曜の夜だということを思い出してしまう。
だが、どういう訳かこれを見ないと一日が終わる気がしないのだ。
銀時は意味わかんねぇー、と笑いながらいつもなら一緒にテレビを見ているはずの双子の弟がいるキッチンを見る。
晋助は真剣な顔で晩御飯を作っている。
突然、今日は俺が作る、と言い出した晋助に大人しくキッチンを譲った銀時はゆっくりとテレビを見ていた。
しかし、いつもは自分が作っている為、弟が何を作っているのかが気になるもので、銀時はしきりにちらちらと晋助の様子を伺っていた。
時折キッチンに近づいて声をかける。

「晋ちゃーん?銀さんに手伝えることとかなあい?」
「ねぇつってんだろ。つか、こっち見んな。うせろ」
「酷ッ!!そりゃ酷すぎだろ!口悪いなァ!」
「うっせぇ、生まれつきだ」
「嘘ッ!小さい時は俺の後ろチョコチョコ付いてきて可愛かったのにィ!」
「あーうぜぇ!!うっとおしいわ!!あっち行ってろ!」

ぽーん、とキッチンから追い出され、銀時はぽつん、とソファに座ってテレビを見る。
ブツブツと愚痴をこぼしながら。

「何だよ、晋助め・・・昔はホントに可愛かったのになぁ・・・あー、可愛かったのに!」
「うっせぇよ、さっきっから!聞こえてんだよッ!」
「昔はさぁ・・・ホント『銀ちゃんv』って言いながら俺の髪の毛触ってキャッキャ、キャッキャ言ってたのに・・・」

時が流れるのは残酷ね・・・、と呟けばキッチンからお玉が飛んできて見事に銀時の頭にヒットする。
銀時は頭を擦りながら呟いた。

「俺ねー、すぐ暴言吐いたり暴力振るったりする奴は嫌いだなー」
「テメェに好かれなくても生きていけるっつーの!!」

つんけんとした言い方に銀時は可愛くねぇー、と頬を膨らませる。
それを見た晋助が真顔でキモイ、と言ったのは当然といえば当然かもしれない。
銀時はそんな双子の弟の言葉を聞き、昔はよかった、と昔の記憶を引っ張り出す。
双子があまりすれていない頃、晋助はいつも銀時の後ろを付いて回っていた。
『銀ちゃん、銀ちゃん』と双子の兄の名前を呼びながら小さな身体で一生懸命追いかけていた。
そんな双子の弟のことを銀時はうざったく思うこともなく、そんな姿が可愛くてしょうがなかった。
この弟の為ならば、例え大好きなパフェだって分け与えられるほど、弟のことが好きだった。
だが、どういうわけか、そんな可愛い双子の弟は中学に入ってからガラの悪い連中と付き合いだし、中3の頃には『総督』と呼ばれ、不良連中が周りを囲んでいた。
銀時の知らない間に『鬼兵隊』という不良チームまで出来上がっていた始末だ。
そのことを晋助に聞けば、

『気がついたら出来てた』

らしい。
しかし、そんな晋助も今では超名門高校『松下村塾』の学生である。
一体彼に何があったのか、それを晋助に聞いたところで返ってくる答えはいつだって一緒である。

『気まぐれだ』

何とも晋助らしい返答にこの時銀時はなるほどね、と笑うことしか出来なかった。
だが、そんな気まぐれで通えるほど簡単な学校ではない。
そんな訳で、銀時は出来のいい弟を羨望の眼差しで見つめるのであった。

突然黙り込んだ銀時を不審がった晋助はお玉の回収のついでに双子の兄に声をかける。

「ぎん?」
「・・・(晋助はホント両親の良いところ全部貰ったんだなぁ)」
「ぎーん?」
「・・・(その代わり俺は両親の欠点全部貰った感じだぜぇ・・・)」
「・・・おい」
「・・・(そう思うと俺たちってちゃんと兄弟なんだなあって思うな)」
「・・・ぃてんのかこの腐れ天パがぁぁああああ!!」
「ぎゃあッ!!」

すぱこーん、と小気味いい音が響き、それと同時に銀時の頭に衝撃が響く。
くわんくわん、と頭が回る。
銀時は状況を把握するため周りを見渡す。
そこには回収したお玉を持った晋助が鬼のような形相でソファに座る銀時のことを見下ろしていた。
銀時は小さな悲鳴のようなものを上げる。
荒れに荒れていた中学生連中を纏め上げていた『総督』殿は鋭い目つきで双子の兄のことを睨みつけている。
すごい迫力である。
背中にいやな汗を掻きながら銀時は恐る恐る声をかける。

「し、晋助くん・・・?」
「・・・・・・(怒)」
「あわわわわ・・・(汗)」

何故双子の弟が怒っているのかわからない銀時は肩を震わせながら恐怖を味わう。
怒りの理由を知らない銀時に代弁するべき言葉が見つからず、ただ土下座をするしかなかった。
そんな立場の弱い双子の兄に晋助はもう一発お玉を振り上げるのだった。



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