銀魂小説

□雪と月つまりは
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【雪と月つまりは】

突然降り出した、銀色。
それを見て、彼が自分のことを思い出してくれないかと、淡い期待を抱く。
きっと明日には当たり一面それで覆い尽くされるだろうから。
だから、それに身を投げて。
俺に包まれている気分になって。
彼がそう、思ってくれたら俺は幸せ。
彼の心にはいつだって自分が居ないといけないんだ。
だってそうだろ?

俺の心には年中無休で彼がいるのだから。

不公平、でしょ?
ねぇ、

高杉?

俺は夜空を見上げるたびにお前を思い出すよ。
真っ暗な空間に浮かぶ、光り輝く金色。
闇を照らすそれは、彼のよう。
だって、いつだって彼は俺の心を照らしてくれる。

道に迷いそうになっても、
何時だって、後ろで照らしてくれた。

でも、今日は銀色のそれを降らす雲に覆いつくされて、顔を出さない。
空を見ながら考える。

下から見ているものには彼の姿は見えないが、覆い隠している俺からは彼の顔がはっきりと見える。
それって、俺だけが彼の顔を見れているってことで、
つまりは独占。

あれ、嬉しいなぁソレ。

でも、こうやって俺が隠してあげない限り彼は誰にでも均等に光をばら撒く。
人間だろうと、動物だろうと、道端に落ちている石にだって、均等に。

それにちょっと嫉妬しちゃったりして。

罪深い彼は今も気付かず、人の目を惹く。
それが俺には許せないわけでね。
だってほら、恋人に悪い虫がついたらいやじゃん?
いや、全力で守るけれども。
そんな虫、一瞬で消し飛ばすけれどもね?

話はずれたが、とどのつまり彼にはいつだって俺のことを思っていてほしい訳なんです。
月を見たり、黒猫を見たり、蝶を見たりして俺が彼を思い出すように、
彼にも何かを見て俺を思い出してほしいの。

更に要約するならば、彼に会いたいってこと。
空に浮かぶ彼が見られないなら、本物の彼に会って彼を堪能したいんだ。
それでも我慢する俺。

健気だなぁ。

なんて、我慢できるわけもなく、俺は一人雪の降る江戸の町へ。
俺はここだよ、と出ておいでー、なんて子猫を呼ぶように俺は雪を踏みしめながら歩く。
きしきし、と自分の居場所を教えるように、わざと大きな音をたてて。

そしたら、ほらきた。

大好きな彼が目の前に。
寒そうに肩を震わせながら。
きしきしと、俺に似たそれを踏みしめて。




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