銀魂小説

□過ち
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攘夷戦争中、沢山の仲間の命が消えていった。
それを見ない為に払った代償は、あまりにも大きなものだった。



【過ち】



俺は戦場から逃げ出した。
仲間を、大切な人を見捨てて、背を向けた。

後悔は、している。
もしかしたら彼を止められたかもしれない。
俺がいれば、彼はあぁまでならなかったかもしれない。

俺が――
俺が逃げたばっかりに、彼は。

彼は壊れてしまったのかもしれない――

「高杉は…江戸を火の海にしようとしている」

それを聞いた時、眩暈で倒れそうになった。
何とか踏み留められたのは罪悪感があったからなのか。
そんなこと出来る奴じゃないと。
俺が変えてしまったのだと。
俺がケジメを付けなくてはいけないのだと。

「銀さん。私安心しました。もうやんちゃする歳じゃないですもんね」

ニッコリと笑う妙に背を向け、ジャンプを買ってくるように言う。
彼女は「はいはい」と出ていった。

「俺だってやんちゃしたくねぇんだよ。…でも、アイツがやんちゃしてんなら、それを止めるのが俺の義務だ」

痛む腹を押さえて玄関まで行けば、綺麗に畳まれた服と置き手紙。

――馬鹿な女

置き手紙に目を通しながら思う。

――どいつもこいつも馬鹿ばっかり…でもそんな奴らが好きな俺も…馬鹿な奴か

綺麗に洗濯された着物に腕を通し、片腕だけ袖を垂らす、何とも不格好な姿。
足りない、スタイル。
俺に足りないのは、

――高杉…

可愛い傘をさし、万事屋を出る。
なにもかも未熟な俺は周りを傷付けてばかりで、きっとこれからも傷つけるだろう。
でも、それでも今救える何かがあるのなら、俺はそれを全力で守りたい。

「高杉…俺かお前を守る…!救ってみせるッ!」

俺の犯した過ちはそう簡単に償えるものじゃない。
だけど、それでも俺は何かしないといけないと感じている。
だって、俺にとってお前は俺の仲間で、最愛の人だから。



攘夷戦争中、沢山の仲間の命が消えていった。
それを見ない為に払った代償は、あまりにも大きなものだった。

俺の払った代償は、そう…高杉の心だ。
俺の罪の証は高杉自身。
俺が彼を”獣”にしてしまったんだ…
不安だった彼を裏切り、一人にしてしまった。
折角俺を受け入れてくれたアイツを突き放したのは、俺なんだ。

降り続く雨空を仰ぎ見る。
これはきっと高杉の心の涙。
流すことを忘れたそれが空を介して流れ落ちる。

『助けて…!助けてくれ…銀時ィ…』

そう、言われているようだった。




終わり




2009/04/19 潤
 

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