リクエスト

□雨のち君のち雪
1ページ/3ページ

このままずっと君の隣に居られるのなら雨だろうが雪だろうが構わない。


【雨のち君のち雪】


午後から降り出した雨は放課後になっても止まず、未だ降り続いている。
そんな空の様子を昇降口から忌ま忌ましげに睨み付けている者がいた。

「雨なんて聞いてねぇぞ…」

今朝、某ニュース番組のお天気コーナーのお姉さんを信じ、傘を持ってこなかった土方である。
土方は瞳孔開き気味の目を巡らせ、帰宅中の学生の中に傘を持った知り合いがいないか探した。
だが、彼は部活帰り。近藤や沖田等の剣道部員は土方を置いて早々に帰ってしまっている。しかも、部活生は疎らでその中に傘に入れてもらえるほど親しい者はいない。
土方は小さくため息をつき、濡れて帰るかと足を踏み出そうとしていると、後ろから声がかかった。
誰だ、と振り向くとこれでもかと言わんばかりに目を見開いた。

「た…高杉…?」
「んな驚くなよ…」

土方の反応に高杉も妙にきょどる。
普段高杉はこんな時間まで学校にいない。と、いうよりも彼が学校に来ていた事自体珍しいのだ。
二人してオドオドしていると先程よりも一層雨足が増してきた。

空を見上げ、それから土方は高杉を見る。

「お前、こんな時間まで何やってたんだ?」
「あぁ…保健室で昼寝してたら寝過ごした」
「よくこんな時間まで起こさなかったな、保健医」
「俺が起こすなっつったからな」

高杉がローファーに履き替え、一歩前に出る。
土方はそんな高杉を見ながらふと彼の右手を見た。右手、というよりも高杉が持っている物、と言った方がいいだろう。

「…」
「…?何だ?」
「えっいや、何でもねぇよ!」

高杉の白い右手に握られている傘を見ていたか事がバレた土方は意味もなく強めの口調になってしまった。
高杉はそれを気にする事なく、土方が見ていたであろう右手を見、それから土方の両手を見てニヤリと笑った。

「お前、帰んねぇの?」
「あ、帰るけど…」
「…確か帰り道同じだったよな」
「あぁ、そうだったな」
「じゃあ、一緒帰ろうぜ」

な、と言って高杉が昇降口を出ようとした。
土方は高杉を追おうと踏み出したが生憎彼の手元には雨を凌ぐ傘がない。
踏み止まっていると気付いた高杉が振り向き、わざとらしい笑みを向けていた。

「どうしたぁ?早く帰ろうぜ?」
「いや…帰りたいのは山々何だけど…」
「何だ?」
「傘…持ってねぇんだ」

土方の言葉を聞き、高杉は満足そうな笑みを浮かべるとズカズカと土方の前まで行き、ズイと傘を差し出し持たせた。それに土方は驚き、高杉と傘を交互に見つめる。
それがじれったくなったのか、高杉は無理矢理土方に傘を持たせるとさっさと足を進め、屋根のあるギリギリまで行くと土方の方へと身体を向けた。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ