リクエスト
□美人保険医は男のロマン
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ガララ、と紙で切ってしまった指を押さえながら保健室の引き戸を開けると、ぶわっ、と風が吹き、クセの強すぎる天然パーマの銀髪が揺れた。
ただでさえ、纏まりの効かない髪が風に揺られることによって更にぐしゃぐしゃになる。
俺はどうでもよさ気に(実際どうでもいいんだけど)髪をかき上げ、そのまま頭をボリボリ掻いた。
「せんせ〜、指切っちまったんで、絆創膏でも貰えませんかね」
「いいですよ」
「どうも・・・アレ?」
いつもは開口一番に変態発言をかます我が校の保険医、猿飛あやめが普通の切り替えしをしてきた。
しかも何時もより数倍声が低い。
と、言うか正真正銘、男の声です。
俺は何事かと男の方を向く。
な、何だあれは。
紫がかった黒髪をなびかせ、保険医が見ていた書類をデスクに置き、立ち上がる。
長い睫毛で覆われた瞼がゆっくりと上を向き、俺の目を捉える。
そして、しばらく見つめ合う。
あれ、どして?
昨日まではあの、猿飛がそこに座っていたはず・・・。
なのに、あれ?
男だったの?(←混乱中)
俺が目を回していると男が小首を傾げ近づいてきた。
俺の眉辺りくらいの身長の小柄な男が目の前まで来て、手を掴んできた。
それにドキリ、とする。
俺はパクパクと金魚のように口を開閉させる。
「座ってください。指、切ったんでしょ?」
「えっ、あ、はい・・・」
俺は促されるまま、椅子に座り、その向かいの椅子に男が座った。
テキパキと消毒をされ、絆創膏が張られる。
その時間、僅か3秒。
あまりの速さに呆然としていると男が微笑を携え、終わりましたよ、と俺の膝を叩いた。
「あ、ありがとう・・・ございます・・・」
「いいえ、えっと・・・坂田先生?」
「え・・・俺の名前」
「やっぱり。坂田銀八先生だ」
「あーと・・・どなたでしたっけ?」
悪いと思いながらも目先の疑問を問いかける。
男は聞いてなかったのか、とばかりに眉を顰め、それからため息をついた。
「あの・・・」
「今日の朝、校長が俺を紹介したの、聞いてなかったんですか?」
「あー、ジャンプ読んでたかも」
朝の会議の様子を脳内で辿っても読んでいたジャンプの内容しか思い浮かばない。
それを正直に言えば、男は再度ため息をついて、頭を押さえていた。
「この学校って変わってますよね」
「でしょうね。問題のある生徒ばかり集まってくるらしいですから」
「教師も同じだけどな」
ぼそり、と呟かれた言葉に俺は苦笑する。
確かに、ここの学校は何かと問題を抱えている生徒、教師が多くいる。
俺も含めてなんだけど。
なおす気なんてサラサラないけどね。
たぶん、彼も何か問題でも抱えているのだろう。
「えっと、聞いてませんでした。お名前を教えてください」
「高杉晋助。ここの臨時保険医です」
それが俺と高杉の出会いだったわけです。