リクエスト
□愛を知らない子供に最上級の愛を
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【愛を知らない子供に最上級の愛を】
世の中には愛を知らない子供が沢山いる。
一重に子供だけ、とは言えないのが現状かもしれない。
しかし、だ。
何故、愛を知らない子供が増え続けているのか。
私はそれが甚だ理解しがたい。
親の愛に包まれて育つはずの子供が何故、愛を知らないのか。
家庭環境が関係しているのがわかるだろう。
子供がうるさいから殴る。
ストレス発散の為に子供を虐待する。
そんな親が増えてきているから、愛を知らない子供が生まれるのだ。
そして、目の前にいるこの子もまた、愛を知らない子供―――
「高杉、晋助くん…だよね?」
「…銀八…?」
「弁護士の坂田銀時です。君の弁護をする為に来ました」
「…アンタが銀八の言ってた」
高杉晋助、銀魂高校3年Z組在学、18歳、帰宅部。
つい先日起きた、殺傷事件の犯人。
被害者は彼の両親。
どちらとも死んではいないが、怪我で入院中だ。
彼にかけられた容疑。
『殺人未遂』
何とも高校生には似つかわしくない単語だ。
事の発端は数日前。
夜遅くに帰ってきた彼を待ち構えていた両親が説教をしたところそれに激怒し、台所にあった果物ナイフで殺傷。
全治3ヶ月の怪我を負わせた。
というのが、両親の証言である。
本当のところどうかはわからない。
真実を調べて弁護するのが私の役目だ。
「君の両親の証言では、説教をしたら刺された、とのことでした。この証言に間違いは?」
「……」
「…何か言ってくれないと君の弁護が出来ない」
「…別にしてもらわなくても結構だ」
ツンケンとした態度を崩さない不良少年を前にして、私は面倒くさい仕事を引き受けてしまった、と後悔した。
珍しく私に連絡を入れてきた弟が口外一番に『俺の生徒を弁護してくれ』と頼んできたのは今日のこと。
たまたま誰の弁護も受けていなかった私は、弟の『お願い』をおもしr――快く引き受けたのが始まりだった。
その生徒がいる警察署に来て案内された場所には、眼帯を左目に付けた紫がかった黒髪を持つ、まだ幼さの残る少年が無愛想にパイプ椅子に腰掛けていたのだ。
私が案内される途中で教えられた情報で作り上げた彼のイメージと目の当たりにした彼とでは、似ても似つかなかった。
もっとごつくて、髪の毛を染めた不良と呼ぶに相応しい青年がいると思っていたのだが、そうではなく、意外に小柄な品のある少年だった。