リクエスト

□風邪を引いたら騒がず安静に
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銀時は両の手を上げ、項垂れる。

今現在、銀時の後ろには金色の虎が獲物を狙うが如く眼光で大事な男を守るため、小さな兎の背中に愛用の獲物を突きつけているのだ。
小説的な感じでこんな回りくどい説明をしたが、つまりは鬼兵隊の紅一点、来島また子が敬愛して止まない高杉を守るために、害を為すかもしれない銀時の背中に愛用の二挺拳銃を突きつけているという状況なのである。
哀れ、かどうかは分からないが草食動物の後ろには愛の為なら同じ仲間でさえ、あのゴミ袋のようにしてしまえる雌虎が控えているのだった。

銀時は上げた両手を震わせながらまた子に声をかける。
情けないことに声まで震えていた。

「ああああの〜・・・っ、さっ流石に今の状況の高杉に何かしようなんて、かっ考えないからさぁ〜・・・その背中に突きつけているやつをっ下ろしてくれない、また子ちゃんっ・・・」
「うるさいっス、晋助様に害を為すこの害虫が!変な気を起こそうとしたらまた子の愛銃が火を噴くっスよ」

かちゃ、と背中に重々しい黒いそれを押し付けられる。
銀時は冷や汗を噴出させながら縮こまる。
白夜叉と恐れられてきた侍の情けないその姿に高杉は虚ろな目を細め、ため息を付いた。

「ばーか」
「ちょっ、いきなり何?!酷くなぁい??!」
「うっせぇ!あんま叫ぶなッ・・・っ、ごほっごほっ!」
「し、晋助さまぁ!!」

突然咳き込んだ高杉にまた子が心配そうに近づき、背中を擦る。
銀時も心配して高杉に声をかける。

「おい、高杉!あんま無理すんな。悪化するぜ?」
「うっせぇ・・・くそっ、こんな奴に心配されるとか、マジありえねぇ・・・っ」
「あまり喋らないでくださいっス!横になってください」
「あぁ・・・すまねぇ」

ゆっくりと横になり、布団をかけられる。
銀時の予想通り、高杉は風邪をこじらせていた。
それも高熱を伴って。
強がりの高杉は自分が病んでいる姿を見せたくないと無理に起きていたのだ。
だが、銀時にしてみれば高杉が風邪を引くなんて幼少の頃から日常茶飯事で、どうしてそんなに強がるのかが分からなかった。

「高杉・・・看病させてくれよ」
「死ねっ・・・いいから帰ってくれ・・・」
「高杉・・・」
「坂田銀時」

また子が高杉の額にぬれたタオルを置いた後、声を出す。
先ほどまでの冗談じみた口調ではなく、真剣な声で名前を呼ぶ。
その瞳も真剣そのもので、銀時は高杉からまた子へと視線を移した。

「晋助様はこんな状態っス。正直な話、迷惑なんスよ、アンタがいると。お引取り願うっス」
「誰が帰るかよ。てか、何だよその喋り方は。今風なの?〜っスって流行ってんの?恥ずかしくないの?」
「〜〜〜!!うるさいっス!!なんなんスかぁ!人が真剣に話してるってのにィ!!」
「ゴメンっス〜。銀さん、人の話聞かないから真剣に話してるって気付かなかったっス〜」
「バカにしてるんスかァ?!晋助さまぁ!コイツ殺していいっスか?!風穴開けていいっスか?!」
「落ち着け、また子。コイツは俺が殺るって決めてんだよ」
「ヤられる、の間違いじゃないの?」
「・・・殺していいぞ、また子。でも楽に殺すな。じわじわ殺してけ」
「了解っス」

がちゃ、と愛用の銃を般若のような顔で構えているまた子に俺は極力冷静な顔で手を上げる。



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