リクエスト

□喧嘩したって
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「死ねッ!!」

そう言って俺の頬を力強く叩いた彼は、目に涙を溜めながら俺のボロアパートを飛び出した。


【喧嘩したって】


きっかけは些細なことだった。
俺が大事に取っておいたチョコレートパフェ風アイスを高杉が風呂上がりに食べた。
それにキレた俺が『ふざけんなよッ!!俺がどんな思いしてコイツを買って来たと思ってんだ!!』と言ったら、高杉がめっさキレた。
そして、冒頭の言葉と行動である。

今になって思う。
別に俺、そんな重大な思いを持ってあのアイス買ってきたわけじゃないと。
でも、後に引けなくなった俺は、大人気なく高杉の行動に怒りを露にしていた。

それから、俺と高杉は一切言葉を交わさなくなった。



「銀八ィ。アンタ、高杉さんと喧嘩でもしたんですかィ?」
「あー・・・?・・・何で?」
「昼休み、いつもアンタと高杉さん、一緒に昼飯食べてたでしょ?それなのに今日は、俺らと食べましたから」
「何で知ってんの・・・、俺と高杉が一緒に昼飯食べていること・・・」
「3zじゃ、常識ですぜェ?」

にやり、と効果音の付きそうな笑みを向けてきた沖田に俺ははぁ、と重いため息をついた。
昼休み、タバコを吸うために屋上にやってきた俺はすぐ後に入ってきた沖田に捕まり、今の会話に至ったわけで。
俺は面倒臭いと降参の意味を込めて両手を挙げた。

「そーですよォ・・・喧嘩しましたとも。3日前にな」
「やっぱり。で、原因は何なんですかィ?」
「首突っ込まなくていいから。これは俺らの問題なの」
「・・・そうとは限りませんぜぇ?」
「・・・え?」

沖田のセリフにきょとん、となる。
喧嘩したのは俺と高杉なのにどうして俺らだけの問題じゃないのだろうか。
沖田が口を尖らせながら言葉を発する。

「高杉さんのテンションが死ぬほど低くてやってらんねぇ。あの人は冷めてても暗くちゃダメなんでさぁ」
「・・・は?」

意味の分からない俺はどういうことだ、と目で訴える。
だが、沖田は屋上から出て行こうと出入り口のドアノブを掴んだ。
だが、開ける前くるっ、とこちらを振り向き、ニッコリと笑った。

「俺もね、あの人が笑ってないと嫌なんですよ。だから、早く仲直りしてくだせぇ」

俺らの為にも、と沖田はウインクをひとつ飛ばし、屋上から出て行った。
俺はそんな沖田を見て、手で顔を覆った。

「俺だって・・・仲直りしてぇんだよ・・・。でも、意地になってるだけなんだ・・・」

またひとつため息をつき、どうしたもんか、とフワフワの銀髪を掻いた。




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