リクエスト

□本人の意見を尊重させましょう
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その日、ごく数名の間でゲームが行われようとしていた。


【本人の意見を尊重させましょう】


温かい風が吹く屋上で高杉と銀時はお弁当を突き合っていた。
高杉は銀時の買ってきたジュースを横から掠め取って飲み、銀時はそんな高杉に反撃とばかりにお弁当箱の中のミートボールを奪い取る。
他愛もない日常。
そんな日常が屋上への来訪者たちによって無残にも壊されることをこの時二人は知る由もなかった。


「やっぱり糖分がないと力が出ない」
「力が出てないのはいつものことだろ?」

銀時の言葉に高杉が冷たくツッコミを入れる。
昼食を終えた二人は残りの時間を会話だけで過ごす。

「違いますぅ。この目を見てそう思われがちだけど実際は違うよ?超ギンギンだから、銀時だけに」
「何言ってんだ。お前、小学生の時に学校で何人かとかくれんぼした時に面倒くさいからって先家帰ってたろ。鬼の癖に」
「いいじゃん。ちゃんと晋助は見つけたでしょ?」
「そうだけど・・・つか、お前昔っから俺だけは真っ先に見つけてたよな」
「んー、そうだっけ?見つけやすいんじゃないの?」

興味がなさそうに話す銀時。
実際興味がないのだろう。いつもはしない爪の手入れを始めていた。
高杉もそんなに興味があったわけじゃない話題だった為、早々に話を止め、空を眺めだした。
すると、屋上にある重々しくも錆びれた扉が勢いよく開かれ、3人の男が我先に屋上へと慌ただしく入ってきた。
それを二人は目を見開いて見る。
3人の内の一人――土方がずいっ、と高杉に向かって手を伸ばす。
その手には紙切れが二枚乗っており、それを見せるように目の前に突きつけた。

「高杉!俺と一緒に映画見にいかねぇか?!『チャーリンとマヨネーズ工場』!!マジでおもしれぇから!」
「は?・・・いや、お前・・・マヨネーズ工場って」
「特にチャーリンがマヨネーズ製造機に落ちるところが面白くて」
「聞いてないからッ!マヨラーのツボがわかんねぇよ!」
「何だよォ、マジでおもしれぇのに・・・」

肩を落として落ち込む土方が哀れになった高杉が事情を聞こうとした時、そんな彼を押しのけ栗色の髪の少年――沖田が土方と同じく紙切れ二枚を高杉に見せる。
その顔には極上の笑みが浮かべられ、天使の笑みとも取れる顔だった。
しかし、そんな天使の口から悪魔のような言葉が飛び出す。

「ねぇ、高杉さん。あんな奴より俺と見に行きましょうぜェ。『下僕と私の10の縛り方』。おもしれーですぜィ?」
「何それぇ?!そんな映画聞いたことないんだけど?!つか、怖いわッ!!何だそのタイトル!!」
「特に下僕が亀甲縛りされてマヨネーズ製造機に落とされるあたりが爆笑もんでさぁ」
「何でまたマヨ製造機出てきてんだよッ!流行ってんの?マヨネーズ製造機に落ちるシーンって今流行ってんの?!」
「兎に角見に行きましょうぜ?」
「嫌だよッそんな恐ろしい映画!!」
「ちぇ、おもしれぇのにィ・・・」

むぶぅ、と可愛らしく頬を膨らます沖田だが、握られている紙切れに下僕と女王様らしき女性が写っているのを見て高杉は顔を引きつらせた。
それを横で見ていたサングラスにヘッドフォンをつけた男――河上が口元に笑みを浮かべ、自身に満ち溢れた顔で高杉に前の二人同様に紙切れを見せる。

「晋助、ならば拙者と『おっぱいバンド』を・・・」
「死ねぇぇぇええ!!何だよそれ!!どんなバンドだそれッ!!見にいかねぇよそんな映画!!」
「いや、拙者が作ったバンドの名前でござる」
「鬼兵隊じゃなかったのかよ、バンド名!!つか、バンドしねぇって何度も言ってんだろうがァ!!」
「何故だ晋助!これにサインするだけでいいのに!!」
「映画のチケットじゃなかったのかよ、その紙切れ!やんねぇよぉぉぉ!!」
「そんなぁ!」

がっくり、と膝を付き項垂れる河上。
その一連のやり取りを後ろから見ていた銀時は瞬きを2、3度してから口を開く。

「・・・何なのコイツら」
「俺が聞きてぇよ・・・」

重くため息を吐きながら高杉は頭を抑える。
突然現れた3人からチケットを突きつけられ、意味の分からないタイトルを言われたのだ、頭痛もしてくるだろう。まぁ、若干一名違ったのだが。
そんな高杉の様子を見て、銀時は哀れに思ったのかそっ、と頭を撫でてやりながら呟く。

「お前も大変ね」
「そう思うなら代わってくれ」
「それは勘弁」

即答する銀時を軽く小突きつつ、取り敢えず3人から事情を聞くことにした。



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