リクエスト
□可愛いあの子と赤い浮き輪
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どこまでも続く大海原。
その青く透き通る広大な空間に高杉はぷかぷかと真っ赤な浮き輪に身を預け浮かんでいた。
【可愛いあの子と赤い浮き輪】
高杉はその日、クラスの数名と海水浴に来ていた。
『夏といえば海って相場決まってまさぁ』
と、誰かが言っていたが全くその通りかもしれない。
なにも考えず、ただその身を水に預ける。
宇宙空間に行けるとしたらきっとこんな感じなのだろう、と高杉は何ともロマンチックなことを考えながら塩水に浮かび続けていた。
他の者達はたぶんビーチでビーチバレーを行っているはずだ。
誰かに邪魔されないのは素晴らしい、と騒がしくないこの時間を満喫していた。
だが、ここはギャグの世界。こんなのんびりしたなか終わるはずがない。否、終われるはずがない。
「たーかすーぎさんっ!一緒にビーチバレーしやせんかィ?」
「うわっ!びっびっくりしたぁ!!」
突然後ろから抱き着かれ、高杉は大袈裟なほど驚き、素っ頓狂な声を上げた。
高杉は浮き輪からひっくり返りそうになり、慌てて真っ赤な浮き輪を掴み、抱き着いてきた人物に声を荒げる。
「テメッ、何しやがる!!…んのっ、沖田ァ!!」
「何をそんなに驚いてるんですかィ?」
高杉の反応に沖田は首を傾げて声を出した。
きょとんとしている沖田を見て高杉は先程の自分の反応を顧みて顔を真っ赤にし、それをごまかすように咳ばらいをした。
「…っ、で?何だって?」
「あぁ、ビーチバレーしないかと思ったんですが計画変更しまさぁ」
「は?」
「一緒に泳ぎましょうぜ♪」
「え?ちょっ、沖田ぁ!?」
浅瀬で浮かんでいた高杉の浮き輪を押して、二人は沖合の方へ泳いでいく。
そんな二人を砂浜で見ていた土方はビーチボールを持って周りに声をかける。
「おーい。総悟と高杉不参加だからビーチバレー始めんぞー」
「えー?何で杉は不参加アルかぁ!あの餓鬼はどうでもいいけど」
「はいはい。とにかくするんだろ?なら始めようぜ」
土方は神楽の背を押し、ビーチバレーを促す。他のメンバーは理解したらしく何も言ってこない。
神楽は腑に落ちないようだが、優勝チームには昼飯を奢るルールの為、気を取り直し、
「おっしゃあ!私には勝利の二文字しかないアルぅぅぅ!!」
と、気合いの入った声を上げた。