リクエスト
□水も滴るなんとやら
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突然の雨。
たまには雨宿りでも。
【水も滴るなんとやら】
パチンコ帰りに雨に降られた。
最悪だ。
パチンコでは大損だし、雨には降られるし・・・神様ってホントいないね!
銀さん悲しいよォ!
半泣き状態で雨の中を駆けていたが、雨脚が強くなってきてやむなく雨宿りが出来そうな店の軒下に駆け込んだ。
そこには先客がいて、派手な着物を着た女が一人、じっ、と雨の降る空を見つめていた。
顔は長い前髪で隠されている為良く分からないが、たぶんかなりの美人さん。
雨に濡れているらしくしっとりした黒髪が綺麗だし、妙な色気まである。
俺はごくり、と唾を飲み込む。
神様ありがとう!
さっきはいないって言ってごめんねっ!
アンタいい人だわ、ホント!
自分でも調子のいいことを思っていると思いながら俺は女に声をかけた。
あくまでも自然に、警戒されないように。
「急に雨降ってくるなんてツイてないよなぁ。ねぇ、お姉さんもそう思うだろ?」
「・・・・・・」
「・・・」
アレ?
聞こえなかったのかな?
それとも無視??
ガラスのハートに少し傷を付けながら、俺はもう一度声をかける。
今度は先ほどよりも声のボリュームを大きくして。
「ねー、お姉さん!雨酷いねー!!」
「・・・・・・」
「ねぇ、聞こえてるゥ?!アレッ、デジャヴ!!」
「・・・っ」
空を眺めていた女が突然顔を地面に向け、顔を押さえて肩を震わせた。
慌てて俺は女に近づく。
女は膝を折り、仕切りに詰まったような息を吐き出している。
「オイ、大丈夫か!?気分でも悪くなったのか!?」
「・・・っ、・・・ふっ!」
「オイ!!・・・っ、今病院に・・・っ」
連絡を、と繋げようとした言葉を飲み込む。
女が俺の着物の袖を掴んで、首を左右に振っていたからだ。
俺は仕方なしに女の肩を抱く。
「どこが悪い?うちでよけりゃ床くらい貸してやる」
「・・・っ、ぷっ」
「・・・あ?」
「ふっ、ぁ、あはははははっ!!」
「えっ?」
突然笑い出した女に俺は呆ける。