Novel2

□君の、
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……?
彼女の隣に居る奴等は何だ…。
久しぶりにはば学の近くに来たから彼女に会いに来てみたらこの様子。
丁度下校中で、すぐ彼女を見つけられたのは良いけれどなんで彼女は男子生徒に囲まれてる。

遠くからでは何を話してるのかはわからない。
けれど、彼女の顔に笑顔があるのは事実。

楽しそうに微笑む彼女は、なんだか俺の知っている彼女ではなくて。
正直な気持ちを言えば。
嫌なものを見てしまった。
なんだか今彼女を待って喋っても、きっといい気はしないだろう。
このまま帰るか。
くるりと身を返し、自宅のある道の方へと足を運ぶ。

ああ、なんてつまらない気持ちなんだ。
俺は大人だろうに。
なんで嫉妬なんてしているんだ。
彼女は彼女の生活がある。
俺の部屋で珈琲を煎れてくれる時間が、彼女の全てではない。
わかっていた事なのに、本当はわかっていなかった自分がなんだかもどかしい。


『藍沢先生っ!!』


俺を呼ぶ声。
振り向けば彼女が居て。
息を切らせいる彼女を見れば走って来たのだと知る。
「なんで君がここに?」
『先生を、見つけたので…!!先生学校の近くに来るなんて珍しいですね、お仕事ですか?』
追いかけてきてくれて嬉しい、なんて気持ちも、彼女のある言葉にひっかかってそれはどこかへ吹っ飛んだ。
「俺が仕事以外で行っちゃいけないか。」
『え…?』
「俺が仕事以外で学校の方へ行ったらいけないのかと聞いている」
『い、いえそんな事は全くっ!!』
必死にそんなつもりで言ったんでは、と弁護する彼女を見ていたら脳裏にさっきの男に囲まれていた君を思い出して。
「…。君には彼氏が沢山居るんだな」
『かっ彼氏なんていないです!皆友達で…っ!』
君は本気で言ってるのか。
男子生徒の目を見ればわかるだろう。
そいつらは皆君の事が好きだろうというのに、君は気づいてないとでも言うのか。
「あんなに楽しそうにしてたのに…?」
『そ、それは友達ですから!』
「あんなに笑ってたのに?」
『…み、見てたんですか…?』
「…見てないと言えば嘘になる。」
彼女の事なんて気にしないで、出てくる言葉を全てずけずけと吐き出してやるが、
『…わ、私は…』
だんだんと彼女の声が震えてきて。
その震える声で俺は我に返る。
しまった。彼女にはそんなつもりなかっただろうに。
せっかく追いかけてきてくれた彼女に、嫉妬で生まれた怒りをぶつけてしまうなんて。
なんて俺は子供なんだろうか。


「…悪かった。今のは忘れてくれ」
『…え、』
忘れてくれ、だなんて理不尽な話か。
「忘れてくれ、ではないな。」
『……?』
「柄にもなく君の周りに居た男共に嫉妬して…、さらに君に八つ当たりしてしまったんだ。悪かった、許してくれ。」

彼女をちゃんとみて謝る。
『そ、そんな…、』
彼女の目にはうっすら涙が浮かんでいて。

俺が泣かせてしまったのか。
「本当に悪かった。…実は、学校の近くまで来たから君に会いに行ったんだ。」
『そ…う、なんですか?』
「あぁ。そしたら君が男に囲まれてるのを見て、ヤキモチなんか妬いた。…まだまだ俺はガキだな。」

きゅ、と俺の裾を掴む彼女を見れば笑っていて。
「な、何がおかしい…?」
『嬉しいんです』
「…っ」
『先生が、私にヤキモチ妬いてくれるなんて。』

私、先生の事だいすきです、先生の傍に居たいから、彼氏は作らないです、なんて彼女は言って。

なんて子だろう。
自分の言ってる意味がちゃんとわかっているのか?
俺は自分の顔がどんどん赤くなっていくのがわかった。
俺の傍に居たいから彼氏は作らないんです、って。










その彼氏の座は
俺が貰ってもいい、という事か…?


20100720
一片一檎
Hitohira Ichigo
*
Afternoon tea





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