Novel

□死にたがり
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死ぬときはさ、誰だって簡単に死ぬんだ

本当に簡単に。


妖精の鍵。
俺はさ、小さい頃、それを使って父さんや母さんの居る所に行きたかった。

言ってしまえば早く死にたかった。
今は別にそこまでは思ってはいないけど、でもいつ死んでも良いって思ってた。
死ぬ事なんか、怖くないから。

だけど、お前にまた逢って、またお前を好きになって。問題はそこからなんだ。

どうも俺はイカレたらしい。
だってお前を見る度、お前が俺に笑ってくれる度、どうしようもなく死に恐怖を感じる。

―今死んだら、お前とはもう逢えない


馬鹿みたいだろ?
今まではさ、高い所から飛び降りたり、屋上の塀を猫みたいに平気で歩いたりしていたくせにさ。

今はそれすらにも恐怖を感じる。

いや…、ちょっと違う。
正確には死ぬ事に恐怖があるんじゃない。
そういうギリギリの事をした後に見るお前の泣きそうな顔。

あれが怖いんだ。

眉を八の字に曲げて。
眼を丸くして瞳は、奥の光を失ったみたいに。
口は何か言いたげに少し空いて心の言葉がこぼれているよう。

あの顔が怖い。

あの顔を見るといらない事まで言ってしまいそうになる。
心配しているんだろうが、俺から離れて行くような、そんな風に思える。
言ってしまえば見捨てられてしまうような。

『死んじゃうかもしれないんだよ』

死。
今まではそんな事なんて、どうでもよかったけど、今は…そうじゃない









もう少し大事に生きてみても、神様はそれを許してくれますか

20100702
一片一檎
Hitohira Ichigo
*
Afternoon tea





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