Novel

□照れて隠せば
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お前は俺のものだ。
だからお前の時間は全て俺のもの。
だから誰にも渡さない。

なのに。
くそ、なんでこんなに遅いんだ!
イライラしながら時計と睨み合う。

約束の時間からかれこれもう1時間も経つ。

ナンパか?キャッチセールスか?それとも何か、事故にでもあったのか?

頭の中を思いつく原因がぐるぐると回る。
『設楽先輩!』
俺の好きな声音。
俺の好きな声色。
俺の好きな声が、俺を呼ぶ。
よかった、来た。
無事だ、よかった、ああ、逢いたかった。

無事なのはいいが何時間待たせるんだ。
彼女の顔を見たら安心してイライラが込み上げてきて。
「ふうん?」
声にかなり苛立ちが混ざる。
『遅くなってごめんなさい!怒って…ますか?』
俺の不機嫌さにびっくりしたのか、しゅん、とうなだれて。
それを見たら苛立ちはどっかにすっ飛んでいった。
「そう、だな。怒ってないわけじゃない。」
俺はなんて素直じゃないんだろう。
『ごめんなさい…』
ぎゅ、と俺の服の裾を掴む。
くそ、可愛い。
むかつくくらい可愛い。
「……。」
抱きしめたい
『洋服選ぶの、時間かかってしまって』
ああもう、俺好みの服を着やがって。
「おい」
キスしたい
『え?』
ああ、我慢できない。
「好きって言え」
『…へ…、?』
好きと言われるまできっとこの欲望は収まらない。
「言え。」
『えと』
「言わないと許さない」
頼むから言ってくれ。
『…好き』
やばい
「聞こえないな」
これは…
『好き!!』

だめだ、悪化した。

ご褒美だ、と言いキスをする。
彼女にご褒美と言いつつも、ご褒美を貰うのは勿論俺の方。
待たせといた上に可愛い事してさらに好きだと?こいつは馬鹿なのか!?

(俺が言わせた…?そんなもん知らない。)

いきなりキスすると思ってなかったのか彼女の口は半開き。
ああなんて間抜け。
そんな所も愛おしい。
だめだ、ただのキスじゃ満足出来ない。
嬉しい事に口は半開きだし?
せっかくだから、と舌を入れ込む。
俺の舌に驚いたのか、びくん、と身体を震えさた彼女を、そのまま壁に追いやり押さえ込む。
続けて口内を犯す。
貪ると表現する方が正しいかもしれないな。

『…っ、…ふ…』
彼女の、キス時に漏れるこのくぐもった声が堪らなく好きだ。

彼女のこの声は多分この世で一番エロチシズムに溢れてると思う。
流石俺の見込んだ女。

充分に彼女の中を楽しみ、唇を離せば、銀色の糸が橋をかける。

はぁはぁ、と酸素を求めて息をする彼女に
「ふん、ま、これで許してやる」
なんて意気がった事を言ってみる。

『先輩の、助平』
真っ赤な顔をして何を言う。
恥ずかしいのが移るだろだろうが馬鹿。
「助平なのはお前だろ。何赤くなって興奮してるんだ。お前は変態か」

あ。

言ってから後悔。
しまった。また言い過ぎた。
彼女はみるみる内に涙を溜めて、目尻に真珠を作り出す。
『酷い…っ勝手にキスしてきたのは先輩じゃないですか!』

ああ、また喧嘩が始まる。







今日は喧嘩なんかしたくないのに。
ため息で自分を落ち着かせ、言葉よりも早く彼女を抱きしめる。

落ち着くまで、こうさせろ…馬鹿


2010710
一片一檎
Hitohira Ichigo
*
Afternoon tea





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